会場には、往年のジブリ作品の原画や直筆の資料が並ぶ
会場には鈴木敏夫氏が実際に使用していた宣伝スケジュール表も展示されている

――たしかに、このスケジュール表を見ていると当時のご苦労が想像できますね。作品が公開された当時の時代性や世間の気分を感じることができるのも、今回の大博覧会の醍醐味のように思えます。

野中:そうですね。特に過去の新聞広告が壁一面に貼られたコーナーでは、当時を思い出して懐かしい気持ちになる方が多いと思います。新聞のデザインやコピーは、時事性を意識した見せ方をするものが多いので、注意深く見てみると思わぬ発見がありますよ。

たとえば『千と千尋の神隠し』(2001年公開)の朝日新聞の広告には「イチロー。首位打者おめでとう。」というコピーが入っているんです(笑)。

新聞広告が壁一面に貼られたコーナー。キャッチコピーには時事性を反映したものも少なくない

――『千と千尋の神隠し』はロングラン上映だったこともあり、新聞広告のバリエーションも多くて見応えがありそうですね。

当時劇場で映画を観た人からすれば懐かしい広告も、若い世代のジブリファンにとっては新鮮に感じられると思います。この博覧会で目にした広告がきっかけとなり、新たにジブリ作品のファンになる人も多いでしょうね。

野中:今回の博覧会は、まさしく世代によって多様な楽しみ方ができるイベントだと思います。

もうひとつ、個人的に思い入れがあるのはジブリ社内を再現したコーナーです。中でも鈴木敏夫の仕事部屋を再現した一角のクオリティーはとても高く、本棚や小物まで本物とそっくりです。あの場所に行くと、宮崎と鈴木が昨晩観たNHKスペシャルについて雑談している風景や、宣伝について鈴木と打ち合わせをした際の思い出がフラッシュバックします。

鈴木敏夫氏の仕事部屋を再現したコーナー

――展示物の中には、ジブリ社内の張り紙や社員旅行のしおりなどもありましたね。スタジオジブリの「普通の会社らしい一面」を垣間見た気がして、ファンとしてはうれしかったです。

野中:実はジブリって、「いかにも会社っぽいこと」も意外としている会社なんです(笑)。過去には、秋川渓谷での「トトロキャンプ」や、忘年会での「尻相撲選手権」なんていう社内イベントも開催していました。

ジブリ社内の張り紙が展示されているコーナーには、「尻相撲選手権」という一風変わったイベントの告知も
スタジオジブリでは、取材を兼ねて社員旅行や遠足を開催することもあるのだとか

――世界的なアニメーション制作会社であるジブリで尻相撲選手権が開催されていたとは衝撃です(笑)。貴重な原画や未公開資料に限らず、ジブリという会社の素顔を知ることができるすてきな博覧会ですね。

野中:ありがとうございます。『ジブリの大博覧会』は911日(日)まで開催中ですので、ウレぴあ総研の読者のみなさまも、ご家族やお友だちをお誘い合わせのうえ、ぜひお越しください!

 

【展覧会概要】

名称:ジブリの大博覧会 〜ナウシカから最新作「レッドタートル」まで〜

会期:201677日(木)〜911日(日) 会期中無休

時間:10:0022:00(最終入場 21:30

会場:六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー内スカイギャラリー

入場料:一般1,800円 高校・大学生1,2004歳〜中学生600

 

株式会社エディトル所属。IT系雑誌やムックの編集業のほか、コミック、文芸、お笑い、ライフハックなど多分野の記事を執筆。絵が描けないくせにイラストのディレクションに手を出し始めた今日この頃、この仕事はなんでもありなんじゃないかと思い始めている。