人間にとって“食事をすること”は単に空腹を満たすだけではなく、楽しみ、喜びです。誰かとお喋りしながら食事をしたり、作ってくれた人に感謝したりされたり。
でも、子育ての中で食事の時間は叱ることが最も多くなる時間です。
どんな風に食事中のマナーや躾をしていったらよいのでしょうか。『1人でできる子になる 「テキトー母さん流」 子育てのコツ』の著者の立石美津子がお話します。
「食事中に言いがちなママの小言」あれこれ
こんな小言をつい言ってしまいます。
- ・手を使わないで!スプーンで食べて!
- ・好き嫌いしてはダメよ!
- ・残したらダメ!全部食べなさい!
- ・姿勢が悪いよ!
- ・足をブラブラさせないの!
- ・零さないで!
- ・よそ見しないで食べなさい!
- ・ピチャピチャ音を立てないで!
- ・肘をつかないで!
- ・左手をテーブルの上に出して!
- ・席を立っちゃダメ!
- ・しっかり噛んで食べなさい!
挙げればきりがなく、もっと出てきそうですね。でも、子どもにとってこんな風に言われながら食べる食事はちっとも美味しくありません。
もし自分が食べている時、同じように言われたらどう感じるでしょうか。
1日、3回もある食事。これからも毎日続く食事。箸の上げ下ろしから始まり、細かいことをうるさく言われたら、食事時間が苦痛になってしまいます。
具体的な解決策3つ
1.一度に複数を要求しない、食事のマナーは一回に一つだけ
食事中に教えたいことは山盛りありますが、一度に全部要求するのは止めましょう。
例えば、今日は「肘をつかないこと」だけを教えようと思ったら、食事を残しても、よそ見をしても、箸の使い方がおかしくてもスルーし、見逃してやるのです。そして、肘をつかなかったら「うわあ、肘をつかないで食べることができているね」と褒めましょう。
そして、翌日になったら「昨日は肘をつかないで食べられたね。今日はお箸を正しく持ってみよう」と一つだけ新たな課題を追加するのです。
2.言い方を替える
でも、お行儀悪く食べている子どもを見て黙っている訳にはいきません。マナーが出来ていないで、将来恥ずかしい思いをするのは子どもです。
そんなときは、次のように言い換えてみてはどうでしょうか。同じことを言われていても受け取る感情は違ってきます。
- 手を使わないで!何度言ったらわかるの!
→スープンを使ってみてね。わあ、上手に食べられた、すごいね~ - 好き嫌いしてはダメよ
→ピーマン苦手なんだね。一口だけ食べてみようか - 残したらダメ!全部食べなさい
→お皿の上をピカピカにしてみて(または、既に食べたものを指して「○○は食べたんだね、次はどれ食べる?」等) - 肘をつかないで、左手をテーブルの上に出して
→左手は上、肘は下だよ。やってみて~ - よそ見しないで食べなさい
→お皿の上をみて食べようね - ピチャピチャ音を立てちゃダメよ
→口をもぐもぐして食べようね。
さて、お気づきでしょうか。上記は「ダメ」「いけない」など否定形を使っていません。
手づかみをするときは「手を使ってはダメ!」の命令形、否定形ではなく「スプーンを持ってね」と言い、一口でもスプーンで食べることができたら「わあ、上手にできたね~!」と少し大げさなくらいに褒めましょう。これなら叱られている感じがしませんよね。
また、肯定形で伝えると「では、どうすればよいのか」が具体的に示されているのです。
例えば道路で走ったとき「走ってはダメ」ですと、子どもは「歩くの?それとも止まるの?」となってしまいます。「ストップ」とか「歩いて」ですとどうすればよいのか明確にわかります。