何を聞いても「さあ」「別に」「忘れた」「知らない」……。もし、そんな一言で子どもが心を閉ざしてしまったら?
子どもとの会話が続かないという悩みは、ある時期多くの親が持つものかもしれません。内閣府の「国民生活選好度調査」(平成23年度)によると、「親子の間の対話があり、互いに相手を信頼していること」という項目を「重要」「きわめて重要」とした人は合わせて87.2%。
一方、実際にこの項目が「十分満たされている」「かなり満たされている」人は合わせて59.8%。理想と現実の間には、約30ポイントもの隔たりがあります。
日常的なことながら難しい「親子の会話」。そこにはコツがあって、しかも10歳までの過ごし方がその後の親子関係を決めてしまう――。そう話すのは、フリーアナウンサーで「NPO法人 親子コミュニケーションラボ」を主宰する天野ひかりさん。
天野さんの著書『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)から、親子の会話のコツを読み取ってみましょう。
「大きな器」を育てよう
アナウンサーが書いた会話のテクニック本と聞くと、具体的な会話術のあれこれが書かれていると思う人が多いはず。ですが、本書で天野さんがまず訴えているのは「会話以前に、まず“親の役割”を考えてみましょう」ということ。
本書で訴えられていることは、「親のいちばん大切な役割は『子どもの自己肯定感を育てること』」。
自己肯定感、すなわち「自分は必要とされている、愛されている」「自分のことが好き」と思える、強い気持ちのこと。この気持ちがあれば、何かに挑戦して学んでいけたり、壁を乗り越えられたり、相手の立場を思いやれる子どもに育ちます。
自己肯定感を育てる、というと少々難しそうですが、これを本書では「器(うつわ)を大きくすること」と言い換えます。
天野さんはこう考えます。
子どもが身につけるべき知識や情報、社会のルール、他者とのコミュニケーションを『水』とするなら、それを受け止める『器』は大きくて、深くて、丈夫であってほしい。
怒られたり、失敗したりしたらヒビが入ってしまう器や、すぐに水がいっぱいになってしまう小さな器では、非常にもったいないと思いませんか?
出典『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』