意識して「認める言葉がけ」を

「〇〇しなさい」「〇〇しないで」「ありがとう(ごめんなさい)は?」

一日に何度となく口にしてしまうこうした言葉は、天野さんによれば「すべて間違い」。こうした、否定したり指示する表現は、自己肯定感の成長を阻む言葉の代表例だといいます。

一方、自己肯定感を育てるのは、「子どもを認める言葉がけ」。

たとえば、空を緑色に塗った子どもを「きれいな色に塗れたね」、女の子とばかり遊ぶ男の子を「お友達と仲良く遊べてえらいね」、電車の中で走り回ってしまう子どもを「元気だね!」と認めてみるのです。

「電車で走ってはいけないよ」と教えるのは、その後。まずは子どものやること、話すことを受け止めることが会話のスタートラインになる、と天野さんはいいます。

しかし、静かにするべき場所で静かにしていることをほめるのは案外難しいもの。出された宿題をきちんとこなすなど、いいことをしても「当たり前」と取られてしまう文化が日本にはあります。

だからこそ、意識して認める言葉がけをすることが親の最も重要な役割なのでしょう。

すぐできるコツは「ただ繰り返す」

会話以前の「器」の育み方をしっかりと確認したうえで、本書では会話の具体的なコツを解説しています。ここで、すぐに使えるコツをひとつご紹介しましょう。

それは「子どもの言葉を繰り返す」。子どもが「痛かったんだ…」と言ったら「痛かったんだね」、「おいしい!」と言ったら「おいしいね!」と、ただ繰り返す。簡単なことですが、子どもは「わかってもらえた!」「理解してくれた!」と感じるといいます。

ここで「どうして痛かったの?」「何があったの?」などと理由を尋ねるのはNG。せっかく生まれた「話したい」という気持ちを邪魔することになりかねないのです。

ただ繰り返す、この基本を守れば、「子どもがどんどん自分から話し出すようになる」と天野さんは太鼓判を押します。

大きな器を育てること、そして、ただ繰り返すこと。これからの親子関係を満ち足りたものにするために、子どもが幼い今だからこそできることを始めてみませんか?

ライター。業界紙、エンタメ系雑誌記者を経て、現在フリーランス。日々の暮らしに「へぇ〜」のアクセントを提供したいと日々勉強中。関心あるテーマは教育、お金、哲学。好きな本のジャンルは児童書・YAで、特技は物語の世界に入りこむこと。