SNSには、子どもとの毎日を楽しそうに綴るママたちの投稿がたくさん。その一方で、今、匿名ママたちのこんなつぶやきも共感を集めています。
「私は一人っ子。正直、子どもたちといる時間より一人の時間が何よりも好き」
「自分のペースを乱されるのがイヤ。自分のペースで動けないことがこれほどストレスとは思わなかった」
「子どもが可愛いと思えない。そんな自分がイヤになる」
ただでさえ、育児は慣れないことばかり。自分の時間もままならないバタバタの毎日の中で、もともとそれほど子ども好き、お世話好きではないママがネガティブ思考にとらわれながらも「もっと“ちゃんと”しなきゃ」と自分を責めるケースは、少なくないのです。
そんなネガティブ思考から脱却したい!苦手なことに向き合っている自分を否定したくない!
そこで、臨床心理士・上級教育カウンセラー・学会認定カウンセラーなどの資格を持ち、さまざまな悩みを持つ人々のカウンセリングを行ってきた明治大学文学部教授・諸富祥彦(もろとみ・よしひこ)先生に、ネガティブ思考を脱する方法をうかがいました。
「そのままでいい。苦手なりに“ぼちぼち”やればいい」
――育児が苦手、わが子がかわいいと思えない…そんな思いを持ちながらも前を向くために、どう気持ちを切り替えていけばいいのでしょうか。
「まず『苦手でもいいんだ』と思うことです。苦手なものは誰にでもあります。それが私の場合はたまたま育児なんだ、と認識を変えるのです。
それは、あくまで“肯定”ではなく“受容”です。(ポジティブな意味が強い“肯定”に対し)“受容”とはただ『私は育児が苦手なんだ』とそのまま認めることです。たとえば、自分が右利きだと認めるようなもの。右利きだと認めるのにいちいち劣等感は持たないですよね。それと同じです」
――気持ちを上げるための言い訳を無理に見つける必要はないのですね。とはいえ、育児は毎日やっていかなければならないもの。『嫌だな』と思いながら向き合うのは居心地の悪い、苦しいものです。
「そのままでいいんです。『嫌だな』と思いながら続ければいいんです。僕のところに相談に来る方でも『自分の子どもがかわいいと思えない』という方が実はたくさんいます。その方たちに『自分の子どもなんだからかわいいはずです』『子どものいいところを見つけましょう』って言うから落ち込むんです。
そうではなくて、私は育児が苦手なんだとか、うちの子がかわいいと思えないんだということをそのまま認める。そして苦手なりに、かわいいと思えないなりに、“ぼちぼち”やればいいんです」
「たとえば、運動が苦手な子に『運動は楽しいよ、運動を好きになりなさい』と言うと余計落ち込む。運動が苦手でも、体育には出なきゃいけないでしょう?それならぼちぼちやろう、と思うじゃないですか。
暑いのが嫌だから死のうっていう人はいませんよね。エアコンをつけたりして何とか対処します。それと同じです。
運動が苦手だったり暑いのが苦手だったりするように、私は育児が苦手だし、子どもがかわいいと思えない。でもぼちぼちやろう、それなりに愛そうと。この“ぼちぼち”“それなり”が必要なんです」
――「苦手だと思っちゃいけない」と悩む必要はないんですね。
「ないですよ、苦手なんだもの。だから、言うとすれば『育児が苦手な人もたくさんいますよ、お子さんが可愛いと思えない方もたくさんいます。でも、みんなぼちぼちやっていますよ』ということです」
――「どうにかしなきゃいけない」と思うと逆に苦しくなる、ということですね。
「そうです。苦手なりにぼちぼちやるっていう姿勢がベストなんです」
「ひとりの時間がほしい」は当然のこと!
――「自分のペースを乱されるのが苦痛」というママは少なくありません。未就園の子どもとの生活は非常に密なもので、ひとりの時間がとにかくなくて、ストレスを感じるママは多いです。
「それは当然のことです。ひとりの時間は絶対に必要ですよ。きちんと作った方がいい。
できるならご主人とご自分の生活リズムをずらし、どちらかが夜型、どちらかが朝型になってもらう。あるいは、実家のお母さんやお友達に協力してもらう。周囲の協力を得ることが難しければ、保育園や託児施設などプロの手を借りる。
お金を使ってでも、一人の時間は絶対に確保したほうがいいです」