二人のサラの活躍に注目!客演作品ショートレポート

まずは高橋さんが出演された舞台から。4月に上演されたReset Limit 第9回公演『音霊戦隊 ディスクレンジャー』と、7月に上演された萬腹企画二杯目『コトノハ』。この2本とも、平 康臣さんが脚本・演出を担当されています。平さんには、2014年にReset Limit 第3回公演『ニコラ』のインタビューでご登場いただきました。

平さんの作品は、ゲーム、アニメなどオタクカルチャーから強い影響を受けつつ、普遍的なエンターテイメント性も忘れていないのが特徴。カタルシスと感動が押し寄せてくるラストが平さんの真骨頂です。高橋さんは、この世界でどのように活躍したのでしょうか?

超キュートなたかさらが大活躍!『音霊戦隊 ディスクレンジャー』

『音霊戦隊 ディスクレンジャー』は、音楽の力で戦う「ディスクレンジャー」が活躍する戦隊モノ。ディスクレンジャーのメンバーはアキバ系オタク男子に、すし屋のオジサン、そしてアラフィフのシングルファーザーと、なんだかヒーローらしくない面々。さらには悪の組織の女王までレンジャー入り!というひねりまくった設定です。

この作品の中の高橋さんは、悪の組織の一員、その名も”ファンタジーモーニング”。ピンクヘアーのカワイイ系キャラ。これはあまりハーベストでは回ってこない役どころでしょう。劇中には観客席との掛け合いもあったりするのも、新しい経験だったのでは?

そして物語が進むにつれて、ファンタジーモーニングが実はこのストーリー全体のヒロイン的な役どころだったことが明らかに…。孤独と戸惑い、そして哀しさのあるキャラクターとして描かれます。ここで、感情の起伏がしっかり表現できる高橋さんの演技力が光りました。

『音霊戦隊 ディスクレンジャー』

本格的な殺陣に初挑戦!伝説のあの女優を彷彿とさせる『コトノハ』

同じく平さん脚本・演出による『コトノハ』、こちらはスマホゲームの中にVR的に入りこんだオタクサークルと、その「オタサーの姫」がゲームを攻略しながら謎を解き明かしていく…という設定。高橋さんは、そのゲーム内の主人公”楓花”という、これまた重要な役どころでした。

『コトノハ』より

劇団ハーベストの「真っ向ガール」より一足早く、殺陣に初挑戦した高橋さん。流麗な剣さばきとはいきませんが、たどたどしくか弱い少女が懸命に剣を振る悲壮感がにじみ出ています。ラストには、他の作品との橋渡し役だった、という設定もほのめかされて…。

観劇しながら頭によぎったのは、デビュー直後の薬師丸ひろ子さん。映画デビュー作『野生の証明』の体当たり演技や、『戦国自衛隊』で武士の格好をしていた姿と重なりました。守ってあげたい儚さと、何とも言えない強い存在感が共通項でしょうか。女優としての高橋さんも、これからが楽しみです!

『コトノハ』より

宮沢賢治の世界でドラム熱演!多彩さを見せつけた『想稿・銀河鉄道の夜』

広瀬咲楽さんも相次いで舞台に客演されました。それがTOHOKU Roots Project 『想稿・銀河鉄道の夜』と、ピアノ朗読劇『セロ弾きのゴーシュ』。双方とも音楽を軸に、そして宮沢賢治の名作をモチーフにした作品です。

東日本大震災から5年、東京で制作し東北ツアーも敢行した『想稿・銀河鉄道の夜』のテーマは、人間の生と死、いや、この宇宙に存在する全てのモノに捧げる作品…。まさしく宮沢賢治の世界そのものでした。

『想稿・銀河鉄道の夜』より
『想稿・銀河鉄道の夜』より

いくつもの役柄として登場する広瀬さんですが、印象深いのは可憐な女学生の役どころ。コメディタッチの演技もありつつ、悲劇的な最期を迎えるシリアスな演技のコントラストは見事でした。個人的には、小松彩夏さんと広瀬さんが同じ舞台に立っているのも感慨深かったです。

さらには劇中でドラム演奏までこなす多才ぶりは、劇団ハーベストきっての音楽的才能を持つ広瀬さんならでは。東北出身の大先輩に交じって、大きなインパクトを残してくれました。今作の音楽を担当している立石一海さんによる楽曲も素晴らしく、鮮烈な印象を残す作品でした。

可愛い子だぬきに変身!千変万化の活躍を見せた『セロ弾きのゴーシュ』

一方、ピアノ朗読劇『セロ弾きのゴーシュ』は、『想稿・銀河鉄道の夜』と同じく音楽を立石一海氏が担当。立石さんが奏でるピアノと同時に演者たちが入れ代わり立ち代わり朗読するというスタイルです。

『セロ弾きのゴーシュ』より

今作でも様々な役どころを演じる広瀬さんですが、ゴーシュの家に遊びに来る子だぬきの役は出色。何とも可愛らしい役どころで、ゴーシュのチェロと一緒に腹太鼓をポコポン!そんなシーンを広瀬さんはパーカッションで演じます。

ゴーシュのチェロは、ピアノの立石さんが表現するのですが、ピアノとパーカッションでの掛け合いはユーモラス。作品全体の中でも際立ってほほえましいシーンになっていました。音楽による表現と、朗読による演じ分けで作品が紡ぎあげられていく作品は、非常に新鮮で興味深かったです。

『セロ弾きのゴーシュ』より