4. フランス人は、よく子どもを預ける
――大人が楽しむためだけに、ベビーシッターに子どもを預けることはよくあるのですか?
(H)はい、コンサートに行ったり、レストランに行ったり。ベビーシッターはとても安く利用することができます。
(K)もちろん子育ては大事ですが、子ども抜きの大人だけの時間をつくることは大事なんじゃないかな。
(H) 何家庭かで子どもをまとめてひとりの方にお願いすれば、シッター代は数百円ということもありえるんです。
――それは本当に安いですね! ベビーシッターは学生のアルバイトなのですか?
(H)いえ、学生はいないですね。専門の方のみで、アフリカ系とかフィリピン系が多いです。
5.フランス人は、早く大人になりたがる
――柴田さんの本の中に、「フランスでは子どもは大人に成長する以前の、未完成な生き物」ということが書いてあり、大人に主眼を置いた考えが基本にあるのだなあと思いました。
(K)それは子どももわかっているようで、たとえばフランスの子どもってかなり裏表があるんです。
親の前ではものすごくいい子なのに、親がいなくなったとたんに本性を現す、みたいな。けっこう抑圧されているんじゃないですかね。
(H)パリのレストランはほとんど中学生以上でないと子どもは入れないですしね。
――そうなると、子どもは早く大人になりたい、と思うのでしょうか。
話は変わりますが、少し前、日本では雨宮塔子さんが小学生と中学生のお子さん2人を元夫のもとにおいて帰国しましたが、フランスに残ることはお子さんたちの意思だったそうなんです。
先ほどからのお話を聞いて、フランスで生まれ育った雨宮さんのお子さんたちは、日本の同じくらいの年齢の子どもと比べたら、しっかり自分の先々を考えて残りたいと言ったのではないかと思いました。
(H)そうですね。特に進路については、14歳で決めないといけないんです。一生を決めるすごく大事な時期です。
――ずいぶん早いのですね。14歳にもなればもう大人ということでしょうか。
フランスにはなくて日本にはあるいいこと
――子育てをする上で、日本のいいところはなんだと思われますか?
(H)なんといっても治安がいいところでしょうね。パリはヨーロッパの中でも年々治安が悪くなって、小学生は親か代理の人の迎えがないと帰れないんです。時間までに迎えに来ないと、警察に引き渡すこともできるんです。
(K)日本に帰って驚いたことは、満員電車の中で、ランドセルを背負った小さな子どもの存在です。あれはパリでは考えられないですね。
(H)それと、日本の子どもは努力次第でなりたいものになれるなど、将来の可能性が幅広く残されていると思います。フランスではパン屋の子どもが大学に進学することはほぼありえないですから。
(K)フランスはスポーツや芸術にしても英才教育が盛んなのですが、成功するのは一握りです。落ちこぼれてしまった子どもの行き場がないんです。
――英才教育のひずみが子どもに行ってしまっているということですね。
日本にもいいところがあるとわかってよかったです。私たちも、隣の芝生を羨んでばかりいないで、自分らしい子育てをしていきたいものです。
【取材協力】柴田久仁夫 ほぼワインな日々