赤ちゃんのさい帯(へその緒)や胎盤に含まれる血液、「臍帯血(さい帯血)」。

出産の時に採取可能なこの「さい帯血」が、いま再生医療の分野で注目を集めています。

脳性麻痺や自閉症、自己免疫疾患など、今まで治療が難しかったさまざまな病気の治療への応用が期待されており、もし自分の赤ちゃんが将来、そのような病気にかかった場合、自分のさい帯血を使って治療を受けられる可能性があるのです。

子どもの脳障害や自閉症の治療などに大きな期待

「さい帯血」には、さまざまな細胞に成長する「幹細胞」という細胞が豊富に含まれています。

赤ちゃんの血液ゆえ増殖能力に優れた細胞が多く、移植先の環境にも適合しやすいという特性があるため、骨髄移植と並び、白血病の方への移植など血液疾患の治療に広く使われるようになっています。

そして、近年大きな関心を集めているのが、さい帯組織に含まれる「間葉系幹細胞」と呼ばれる幹細胞。

神経細胞や筋肉、骨、軟骨など多様な細胞に成長する能力を持つことから、脳の障害や免疫にかかわる疾患への治療効果が期待されています。

では、具体的にどのような病気の治療に役立つのか、民間さい帯血バンクの国内大手・ステムセル研究所の佐藤英明氏にお聞きしました。

「さい帯血を使った再生医療研究は、アメリカを中心に約10年前から始まり、現在では日本を含めアジア諸国で行われています。

なかでも成果を上げ始めているのが、小児の脳障害(脳性麻痺や新生児低酸素性虚血性脳症)に対する研究です」

「また、近年の自閉症(自閉症スペクトラム障害)に対する臨床研究(米国)において、期待の持てる成果が報告されているほか、小児難聴や I型糖尿病(小児糖尿病)といった疾患を対象にした研究も進んでいます。

将来的に研究の対象となる疾患は特定しきれませんが、過剰になった免疫機能を調節したり、本来備わっている自己治癒作用を補助したりする用途での研究が、今後も発展していくのではないかと考えています」

さい帯血は、上記に挙げたような小児の病気に対してだけでなく、心筋梗塞、脳梗塞、アルツハイマー病などへの研究も進んでいるそう。

また、本人(さい帯血の提供者)のみならず、ある程度型が合えばニ親等まで利用できるため、今後の治療効果の実証が待たれます。