よく「否定形の言葉を使ってしつけてはいけません」と言われますよね。
これは、言われた側が不愉快な気持ちになるからだけではなく、根拠があるからなのです。
それについて、『〈マンガとQ&Aで楽しくわかる〉1人でできる子になる 「テキトー母さん」流 子育てのコツ』の著者の立石美津子がお話しします。
「否定形の言葉」に対する脳の反応
「目をつむってください。ぜったーーーいにピンクの象を思い浮かべないでください!」
さて、今、あなたの脳裏に浮かんだのは?
“ピンクの象”ですよね。
「再び、目をつむってください。ぜったーーーいに黒い毛がボウボウ生えた、真っ黒な象を思い浮かべないでください!」
さて、今、あなたの脳裏に浮かんだのは?
“黒い毛がボウボウ生えた、真っ黒な象”ですよね。
「頭がマヨネーズまみれの猿をぜったーーーいに思い浮かべないでください」
「鼻からラーメンを食べるおじさんをぜったーーーいに思い浮かべないでください」
どうでしょう?想像してしまいませんか?
実は人間の脳は“否定形”がわからないのです。
最初に聞いたフレーズである“ピンクの象”、”黒い毛がボウボウ生えた黒い象“、”マヨネーズまみれの猿“、”鼻からラーメンをすする人”が強く印象に残るので、振り払っても振り払ってもそれが浮かんでしまうのです。
禁止されるほど好奇心が湧いてしまう
以前、「東京タワー 蝋人形館」という観光スポットがありました。
壁に直径3センチほどの穴が開いていて“絶対に覗いてはなりません”と書いてありました。
でも、結構覗いている人がいるのです。もちろん私も覗きました!
禁止されるほど好奇心が湧くからです。それから「のぞくな!」と言われれば言われるほど“覗く”という言葉が印象付けられるからです。
ということは……。子どもとスーパーへ夕飯の買い物に出かけたとき…。
「走らないで!」「売り物のお肉を触らないで!」と言われて、子どもの脳裏に浮かぶのは?
“走る”“肉を触る”のフレーズなのです。だから、ますます走りたくなり、触りたくなります。
肯定形に言い換えるには
では、どういえば素直に従いやすいのでしょう。
×「走るな」⇒○「歩きなさい」
×「手で食べないの」⇒○「フォークを使って食べようね」
×「絶対に遅刻しないように起きなさい」⇒○「時刻通り起きよう」
×「席を立っちゃ駄目」⇒○「座りましょう」
×「怒鳴ってはいけません。騒がないで」⇒○「小さい声で言いましょう」
×「お店の商品は触らないで」⇒○「売り物は見ているだけにしよう」
×「汚く使うな!」⇒○「綺麗に使おう」
×「散らかさないで」⇒○「片づけよう」
×「ピチャピチャ音を立てて食べないの」⇒○「口を閉じて食べよう」
×「残さないで食べなさい」⇒○「お皿の上をピカピカにしよう」
×「肘をつかないで食べなさい」⇒○「肘はテーブルの外側にね」
×「独り占めしないで」⇒○「お友達に譲ろう」
上のように言い換えることで、子どももポジティブなイメージをもって言うことを聞けるのではないでしょうか。