時代とともに進化しながら、いつの時代も変わらず子どもたちの心に残り続ける「給食」。
育ち盛りの子どもをもつ家庭にとって、栄養バランスのよい給食メニューは、毎日の献立作りの教科書的存在ですよね。
そこで今回は、給食からごはん作りのヒントを学ぶべく、東京・杉並区にある区立三谷小学校を訪問。
三谷小学校は、平成26年度に文部科学省「スーパー食育スクール事業校」に指定、また平成27年度には東京都教育委員会「健康づくり功労(学校給食)優秀校」に選ばれるなど、ユニークな食育の取り組みで知られる学校です。
子どもに不足しがちな栄養素や栄養アップのコツなどを、江口敏幸栄養教諭に伺いました。
半数近くの子どもが「鉄」不足。日々の食事で補いたい
――ずばり、子どもに不足しがちな栄養素は何でしょうか。
江口敏幸栄養教諭(以下、江口)「以前、『子どもたちが1カ月間何を食べたか』という調査を、うちの学校と別の学校とで行いました。するとその調査で明らかになったのは、両校の児童とも、圧倒的に『鉄が足りていない』ということでした。
カルシウムが不足しているとよく言われますよね。でも実際はそれほど不足していなくて、5割くらいの子どもで鉄が不足していたのです。
鉄が不足すると酸素を運んでくれなくなりますから、貧血になったり、運動するとすぐ息切れしたり、疲れやすくなってしまいます。やれスポーツをしよう、体力が落ちていると言っても、その前にちゃんと鉄を摂取しないと、動いても倒れてしまいますよ、と。
杉並区の学校給食では1回あたり3mg(低学年2mg、高学年4mg)の鉄を摂ることになっていますが、そういった結果をふまえて、三谷小学校では必ず100%以上摂れるようにしています。
鉄は、鶏レバーやひじき、アサリ、桜エビ、切り干し大根などに多く含まれています。和食に取り入れやすい食材ですね。
鶏レバーは75度まで加熱すれば基本的には大丈夫なのですが、O-157の問題が起きてからは、給食ではレバー以外のものを使う傾向になっています。
ひじきは、そのまま煮物にしたり、サラダに加えたり、コロッケの中に入れたり。サラダに入れれば、そんなに違和感なく食べられます。
あと不足しがちなのは、食物繊維です。野菜や海藻ですね。これも給食で100%以上摂取できるようにしています」
自分たちで育て、おいしく食べることで野菜が好きになる
――子どもは苦手な野菜があったりしますよね。好き嫌いを減らすコツはありますか。
江口「学校では、1年生の1学期に『野菜となかよし』という学習をします。グリンピースをさやから出して、どこを食べるのかとか、どんな匂いがするのかとか。いろいろなことをやりながら、野菜の名前を覚えていくんです」
――校内にある菜園を見せていただきました。なかなかの規模の菜園です。1年生はにんじんとかぶ、2年生はトマト、さつまいも、ほうれん草、水菜、大根、3年生は大豆……といったように、学年ごとにいろいろな野菜を育てているそうです。