イラスト:上田 耀子

夫の不倫を知り、離婚を決意したある女性は、それを相談した周囲から「それくらい我慢するのが妻」と逆に責められて意気消沈します。

ですが、反省も謝罪もない夫を見て、「私は間違っていない」と勇気を持って離婚を進め、無事に縁を切ることができました。

「離婚は悪」と考える人たちの間で妻は何を思ったのか、ご紹介します。

「どこもそんなもの」で済まされる夫の浮気

1.夫の浮気から離婚を決めたけれど

38歳のある女性は、夫が会社の同僚と不倫している事実を知ります。

何気なく見えた夫のスマホにその女性からのLINEが表示されており、そこには「次はいつ会えるの?」と甘えた言葉とハートマークが並んでいました。

ぎょっとした妻は、夫がお風呂に入っている間にスマホを手に取ります。暗証番号は子どもの誕生日だと知っていたので、チェックは簡単でした。

LINEを開くと、例の女性とのトークがありました。内容を読むと、夫とその女性は一年ほど前から関係が始まり、今も定期的に食事やホテルに行っているのでした。

妻は、かれこれ7年ほど夫とはセックスレスであり、スキンシップもなく自分に関心をなくしている夫の様子には気づいていましたが、まさか不倫までしているとは考えておらず、

「あ、うちもここまで来たな」

と思ったのだそうです。

彼女自身、夫への愛情は薄く「子どものために夫婦関係を続けてきた」自覚があり、これを機に離婚しよう、と心に決めます。

2.「どこもそんなものだから」と親戚に言われ

もちろん、夫の不倫は彼女にとってショックでしたが、それ以上に

「形だけの夫婦になっていることを実感したの。

家では目も合わさないし、会話も娘がいるときだけなのよ。

親がこんな状態じゃ娘にもいい影響はないし、いっそ離婚してシングルマザーになるほうが私と娘にとって幸せだ、と改めて思って」

と、夫との冷え切った関係を修復してこなかった自分についても反省して、離婚の準備を進めます。

不倫の証拠は夫と女性のLINEだけでも十分に証明できると思い、画面ごと写真に撮って保存。夫のクルマのドライブレコーダーをチェックすると、「急に夜勤になって」と言っていた日だけ録画が削除されていることも記録しました。

妻は正社員として仕事をしており、夫と収入は変わりません。そのため親権を取っても娘とふたりで暮らしていくことは可能で、あとは離婚について夫に申し出るだけ、というときでした。

妻の両親はすでに他界しており、子どもを預けるときにいつもお願いする親戚に、「急に離婚したって言われたら驚くだろうから」と先に伝えておくことを思いつきます。

ですが、それを聞いた叔母やその娘たちは、

「浮気なんて、どこの家庭もそんなものよ」

「男は浮気する生き物じゃないの」

「辛抱するのが妻の役目でしょう」

と、いっせいに止めたそうです。

彼女は驚き、どうして離婚に反対されるのかわからず混乱しました。

3.「離婚してはいけない」という思い込み

親戚たちは、

「気持ちはわかるけど、離婚したら子どもはどうするの?片親にするなんてかわいそうじゃない」

「男の浮気なんてどうせ遊びなんだから、待っていれば戻ってくるのよ」

と、妻の“離婚したい気持ち”にはいっさい触れてはきませんでした。

「とにかく『離婚してはいけない』って言うのよね。

どうしていけないのか、そこははっきりしないくせに、ひたすら私が我慢するべきだって。

そんなの納得できるわけないじゃない」

まさかそんな言葉が返ってくると思わなかった彼女は、“夫の浮気を知ったときより大きなショック”を抱えながら帰宅します。

どうして夫の不倫を黙って許さないといけないのか、何を辛抱するのか、離婚を回避させたがる親戚の姿は、どうしても受け入れられないものでした。

そしてふと思い出すのが、叔母は昔自分の夫がスナックの女性と浮気して家まで乗り込んでこられたことがあり、そんなことがあっても結婚生活を優先したのだ、という事実です。

叔母の夫は病気ですでに亡くなっていますが、当時は親戚の集まりにも能面のような冷めた顔で来ていたことを、彼女は覚えていました。

「離婚してはいけない」

「夫の不始末は妻が背負うべき」

を通すのは、こういう体験が元なのかもな、と彼女は思ったそうです。