「第一感情」を伝える
怒りの記録をつけることで得られるメリットは、もうひとつあります。それは、怒りの元になっている感情に気づくことができるということです。
怒りは、「第二感情」と言われています。つまり、「第一感情」という元となる感情があるのです。第一感情は、不安や悲しみ、苦痛、ストレス、寂しさ、期待などです。
たとえば、遅くまで連絡なしに帰ってこない子どもに対して怒りが湧いてしまったとしましょう。「いつまで遊んでるの!」と、つい厳しく叱ってしまいたくなるでしょう。しかし、その怒りの前には、心配や不安という第一感情があるのではないでしょうか?
第一感情を伝えず、怒りの感情ばかりぶつけていると、本当の気持ちはいつまで経っても相手に伝わりません。また、自分も怒ることによってパワーを消耗したり自己嫌悪に陥るなど、悪いことばかりです。
子どもに対して怒りが湧いたときは、元となっている第一感情を探り、それを伝えることが大切なのです。
たとえば、子どもの帰りが遅い場合、「帰りが遅いから、なにかあったかって、ママ心配したよ」と伝えます。そのほうが子どもは「ああ、心配させて悪かったな」と思い、「今度からは遅くなるときは連絡しよう」「決められた時間までには必ず帰ってくるようにしよう」と思うことができるというわけですね。
怒りを抑える「魔法の質問」って?
「私って人に対してイライラしたり怒りっぽい……」というママは、「~しなければいけない」「~すべき」という心の枠が多い、もしくは小さいことが関係しているからかもしれません。
心の枠は誰でも持っているものですが、これがとても多かったり(=マイルールが多い)、小さかったりすると(=マイルールが厳しい)、普段からイライラや怒りを感じやすく、とても窮屈な人生を送ることになります。
そんなママのために、本書は魔法の質問を教えてくれています。
それは、「それって誰が決めたの?」という質問です。
たとえば、いつもご飯の前にお風呂に入っているのに、子どもとご主人が、もうすぐご飯の時間にも関わらずお風呂に入らず遊びに夢中になっていたとします。
「早くお風呂に入ってよ!いつまで経ってもご飯が食べられないじゃない!」という怒りの感情が湧いてきたら、「それって誰が決めたの?」と自分に質問してみます。
すると、「ご飯はお風呂に入ってからじゃないと食べてはいけない」というのは、自分が自分の中で作ったマイルールであることがわかります。
別に、子どもとご主人が楽しそうに遊んでいるなら、ご飯を食べてからお風呂に入ってもいいはずです。
子どもや他人の言動にイライラし、「普通はこうするべきでしょ!」という怒りが湧いてきたら、「それって誰が決めたの?」と自分に問いかけて、心の枠を外してみましょう。イライラや怒りが不思議と軽減されてくるのがわかると思います。
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今日ご紹介した怒りのコントロール法は、最初のほんの一部です。本書は、怒りのコントロール法について、実例を交えてたくさん紹介してくれています。
本書の最後で、数々の怒りのコントロール法を学んだ主人公のみちるは、冒頭で息子の恭介がお友達を叩いていた本当の原因をついに聞き出すことができます。そして、息子の恭平も怒りのコントロール法が分かり、お友達に素直に謝ることと自分の気持ちを正しく伝えることを自ら決意し、実行します。
子どもは親の行動・言動に影響を受けて育つもの。親が怒りの感情を上手にコントロールしていると、子どももキレたりすることなく、上手に周囲とコミュニケーションが取れるようになります。
普段イライラしたり、怒ってばかりいる……というママには、ぜひ本書を読んでいただきたいと思います。日常生活のイライラや怒りが半減し、子育てがより楽しくなるはずです。