ワクワクや思い出を共有しよう

――想像しただけで可愛いですね!他には何か、健太郎くんに良い影響があったと思われることはありますか?

山本:良い影響があったかはわからないですが、私が子供の頃、父からもらってとてもワクワクして嬉しかった缶入りのお年玉缶は息子にもあげています。缶の中に一年間小銭を貯めていって、お正月にお年玉としてあげるんです。

小さな子どもの頃は、お札より小銭の方が身近で使いやすいというのもありますし、一体いくらあるんだろうと自分で数える楽しみもありますので。最近は一緒に数えた後に、お札に両替してあげたりしていますが、いくら入っているのかわからないドキドキ感は親子共通で盛り上がれるんですよ。

「1年かけて親が貯めてくれた」と思うことで、受け取る子どもの気持ちも変化してくると感じます。

あとは1年間の成長記録を誕生日ボードにして作っています。なかなか写真を撮りっぱなしですべてはプリント出来ないのですが、誕生日にはその1年間の成長を感じながら、いろいろな思い出も振り返りながら写真やその時、息子が夢中だったものも入れながらコラージュして親からのメッセージを付けて贈っています。

思い出の物を捨てる前に「ありがとう」と感謝の言葉掛けをしたり。まだ捨てたくないものはアレンジしてまた生まれ変わる楽しさを感じてみたり。

――忘れがちですが、そういった実際に手をかけたものに対する思い入れというものは、親子両方の心に残るものですよね。

山本:そうですね。今は多くのコミュニケーションが携帯メールのやりとりに変わってしまいましたが、一時期は息子が留守番するときに手書きのメモをよく書いていまして、そのメモに息子が楽しい返事を書いてくれて、アナログな手書きメモのコミュニケーションがお互いに楽しかったというのもありましたね。

一人で留守番する寂しさが、メモでのコミュニケーションの楽しさを教えてくれたと思っています。

そして、これは本人にもういいやと言われたらやめようと思ってますが、毎年、銀杏が綺麗な季節に定点観測成長記録のように、同じ季節に同じ公園に写真を撮りに行っています。自然の景色はそんなに変わらないのに子どもの成長はこんなに早いというのが感じられて、1日1日大切にしてほしいなという思いもありまして。

誕生日ボードや定点観測成長記録は、私自身が忘れかけていた、子どもの成長を蘇らせることのできる貴重なひとときになっています。

子どもの発信してくれるすべては親の宝物

――子どもの「夢中」を止めたくない、好きなことを見つけて夢中になってほしいと思いながらも、つい余裕がなく自分の都合で動いてしまい、後から自己嫌悪に陥るなど、多くの母親が経験していることと思います。

実際に、そのようなことに悩まれている多くの方に対してアドバイスなどはありますか?

山本:アドバイスなんて、おこがましくて言える立場ではないです(笑)。

ただ一つ言えるのは、子どもの何気なく言う言葉や、短くもドキッとする言葉、可愛いしぐさ……思いのカケラを発信して新たな視点や気づきをくれる時期は意外と短いので、向き合う時間を少しでも大切にしていただきたいなと思います。

きっとそれで親自身も救われたりすることがあるんだと思います。

実は私自身も、息子がわりとしっかりしていたので小学生に上がってからは安心してよく留守番をさせてしまって、寂しい思いをさせてしまったことがありまして。

振り返ると実はその時が一番、こちらに向けて発信力が高かった頃のような気がするのです。お留守番メモのやりとりや、息子が自分自身で作ってくれた“ボクの掲示板”など、真っすぐこちらに向かってワクワクした目でいろいろ話しかけてくれた時期で、いろいろ発信してくれました。

その言葉や思いを、少し逃してしまったのがもったいないなと感じています。

――やはり大きくなるにつれて、男の子だと会話も少なくなっていくものですよね。それが成長なんでしょうけど……。

山本:そうなんですよね(笑)。大きくなるにつれて子どもも学校、勉強、お友達、趣味……といろいろと世界が広がっていき、やることも多くなってこちらに真っすぐに向かって発信してくることが少なくなってきていますから、今は息子の問いかけの会話の返事も極シンプルなものです。

子どもって、細胞が音をたてて成長しているようで本当にあっという間に大きくなるんですよね。

子どもがこちらに向かってたどたどしい言葉ながらも話しかけてくる時期ってすごく短くて、貴重な時期なんだなと思います。

私はそんな時期にメモをとっていた「カケラノート」が、今も読むことであの頃の風景が広がって元気を与えてくれる宝物です。

実は私自身、創造力豊かに育てようとか、そういったことを考えて育てていたわけではないんです。逆に子どもから気づきをもらうことが多くて。それによって親の方が育ててもらってるな、と思うことばかりです。

著書を読んでも、インタビューをしても、健太郎くんに対する溢れる愛情が伝わってくる山本さん。

今のままで大丈夫かな?どんな子に育つのだろう?そんな親の心配とは裏腹に、子どもは親の愛情を受け取って、しっかりと自分自身の夢中になれることを見つけていくのかもしれませんね。

今回インタビューした山本香さんの著書、『創造力が伸びる!子どもの夢中を止めない小さな習慣』は、通常の育児指南書とはまったく雰囲気が違い、子どもとの何気ない日常を描くことで、子どもの創造力が伸びる秘訣を教えてくれます。

育児真っ最中のママはもちろん、すでに子どもが大きくなったママが読んでも、じんと心に響く一冊です。

ライター&エディター。マーケティング、広告関係の職種を経て、出産をきっかけにライターに。現在は女性向けや子育て関連等のwebメディアでライター、エディターとして活動し、2歳児のマイペースな息子にのんびり育児を実践中。猫と焼肉とビールをこよなく愛するテンプレート小市民。