MUCC
ステージ後方のライトが点滅するなか、ミヤ(G)、SATOち(Dr)、YUKKE(B)、逹瑯(Vo)が登場。
MUCC本日のセットリストは主催のDEZERT・SORA考案と事前にミヤのTwitterでつぶやかれていたわけだが、こういった試みもフェスならではのことだろう。
『アカ』では、逹瑯にスポットライトの真っ赤な明かりがあたり、そして徐々にステージ全体を赤く染めていく。
続いては、ギターのラウドなフレーズと手拍子が響き渡る。とっておきのキラーチューン『蘭鋳』をここで出してくるとは。さながら宣戦布告かのように逹瑯が叫ぶ。
「DEZERTを、ブッ潰しに来ました! MUCCです!」
序盤からフロアは狂乱の渦と化し、
「DEZERTが出てくれというので遊びに来ました。でも細かい嫌からせをしてきまして…、(DEZERTサイドがデザインしたフェスTシャツを掲げて)MUCCのロゴがちゃんと出てねえんだよぉ! …こんな嫌がらせをしてきて、仕返しとして派手に会場をいじくり回しております」
という逹瑯の言葉のとおり、徐々に観客の頭上、フロア天井に吊るされていた照明が下がってくる。
「今日はDEZERTのファンvsそれ以外でいけるよな! 気合入ってるだろうな、全員死刑!」と続け、カウントダウンでジャンプ。この全力の”大人気なさ”が観客のテンションをどんどんヒートアップさせていく。
「今日初めて演奏する新曲です、適当に遊んでいってください!」と、先日発売されたばかりのニューアルバム『脈拍』から『絶体絶命』を披露。そして間髪入れずに『絶望』へとなだれ込んでいく。
MCでは「DEZERTはとてもいいバンドだと思います、いいバンドは早めに打っとかないと(笑)。何回か打ってるんですけどそのたびに飛び出てくるから、トドメを刺しにきました!MUCCです」と逹瑯。
「本当にいいイベントだと思います。これだけのメンツを目の前に並べてやるDEZERT、相当気合入ってると思うから楽しみにしてもらえればと。こういうイベントがどんどん増えると良いよね」と、”後輩”に対する厳しくも優しいまなざしが伺える発言で結び、『ハイデ』へ繋げた。
そして”会場をいじくり回して”という逹瑯の言葉通り『大嫌い』では熱気の充満するフロアにCO2が噴出されるなど、出演バンドのなかで唯一大掛かりな演出効果を使い倒すMUCC。やっぱり最高に大人気ない。
そして最後はMUCCの最新系と呼べる『脈拍』で締めくくられた。
MUCCというバンドが越えてきた”場数”を証明するような、自信と強靭さを感じさせるステージであった。
セットリスト
1.アカ
2.蘭鋳
3.絶体絶命
4.絶望
5.ハイデ
6.茫然自失
7.大嫌い
8.脈拍
DEZERT
トリをつとめるのはこの「フェス」の首謀者であるDEZERTだ。
フロアの天井に吊るされたライトが点滅しはじめ、不穏だがどこか物悲しいインストゥルメンタルが奏でられる。
幕が開くと、ギターを抱えた千秋(Vo)、激しく身体を揺らすMiyako(G)とSaZ(B)、演奏中に時折顔を手で覆って点を仰ぐSORA(Dr)。
「全員愛しにきましたーーーー!」という千秋の言葉とは正反対の『殺意』からスタート。
いきなり攻撃的なサウンドをフロアに叩きつけ、「逹瑯お前へのーー殺意だ!」と、先程のMCに応えるかのような千秋の発言(なお演奏終了後「嘘です逹瑯さんありがとうございます」とフォロー)。
『「君の子宮を触る」』、『肋骨少女』とメロディアスな楽曲が続き、「『This Is The “FACT”』! ぶっ殺していきましょう!」という千秋の言葉から、『「不透明人間」』で観客を熱狂させていく。堂々とした”フェスのトリ”っぷりだ。
「対バンなら他の共演者はどうでもいいんですけど、今日ばっかりはそうは言えない」という千秋。「今日出てくれたバンドたちの話をあえてすると、冗談抜きで…好きです」という言葉にフロアからは拍手が起きる。
「皆それぞれ、意志を持ってやっていることが伝わってくると思うので、今年はこの6バンドだけ幸せになればいいと思います。この5バンドは裏切れない」と続けるとさらに大きな拍手が沸き起こった。
「君たちは…俺たちの気持ちを受け取るしかできない、お金を払って。そのまま人生を全うしてください」とある意味身も蓋もない”FACT”な発言の後に、「新曲」を披露。「君の夢や君の音は聞こえないけど”確かに手を伸ばした”」というフレーズが印象に残る、ストレートなロックチューンだ。
「僕がここに立っている理由は多分ひとつ。多分楽しいから。お前らもそうじゃなかろうか」と千秋。「多分楽しいよ、ライブハウスでやるのは楽しいよ!」と”多分”と留保をしつつ何度も”楽しい”を繰り返す千秋。
そして『「変態」』、『大塚ヘッドロック』と立て続けに繰り出す。盛り上がる観客の表情も”楽しい”が溢れている。
「俺は終わるのやだけど、もうちょっとやります」と、ラストスパートをかけるように『「秘密」』へ。
「ついてこなくていいから、受け止めろ! 死ね! ここが『This Is The “FACT”』だ!」
と叩きつけた『「切断」』で、長いようで短い、DEZERTの”フェス”は幕を閉じた。
セットリスト
1.「殺意」
2.「君の子宮を触る」
3.肋骨少女
4.「不透明人間」
5. 新曲
6.「変態」
7.大塚ヘッドロック
8.包丁の正しい使い方〜終息編〜
9.「死刑宣告」
10.「秘密」
11.「切断」
この”フェス”が何を意味していたのか、今後どんな展開になっていくのかはまだわからない。
ただ、私見でしかないのだが、シーンへの波紋を呼ぶ”一石”ではなく、今後のシーンの“礎”となるような未来を予感させる”フェス”になったように思う。
次回開催は未定だが、再び開催されることを願ってやまない。
だって”多分”じゃなくって”本当に楽しかった”じゃないですか。