気持ちがより伝わる2タッチコミュニケーションとは?
――松澤さんが人間関係をさらによくするために勧めている「2タッチコミュニケーション」とは、どんなものなのでしょうか。
松澤:CA時代の話ですが、満席便でお子様とお母様が離れて座らなければいけない事があります。そんな時、ご好意で、親子で並べるように席を替わってくださるお客様がいらっしゃいます。
その時、CAが「お席を替わってくださってありがとうございます」と1度目のお礼をお伝えします。そして、その1度だけのお礼で終わらせず、着陸前にもう1度お席に伺って、「本日はお席を替わっていただいて本当にありがとうございました」と2度目のお礼をすることで、感謝の気持ちがより伝わるんです。
これは、お詫びも一緒です。例えば、お客様にお茶をこぼしてしまったら、「申し訳ありませんでした」と言うのは普通です。
でも着陸前にもう1度伺って、「お客様、本日はせっかくお乗りいただいたのに嫌な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」と再度お詫びします。ANAではこのように「2回以上お詫びする」のが基本でした。
「2タッチコミュニケーション」という言葉は勝手に私がつけましたが、これは普段の生活でも使えます。
例えば、子どもの発表会の時におばあちゃんが来てくれたら、「今日はありがとう!」が1度目。その後、子どもがおばあちゃんにお礼の手紙を書いて送ったら、2度目のお礼を伝えられます。おばあちゃんは、とても喜んでくれるでしょう。
人は、自分に関心を寄せてくれていることが嬉しい生き物といいます。人間関係は、人に関心を持つところからスタートしているように思います。
私が子ども時代に内気だったように、「ありがとう」と言うことにも勇気がいるお子様もいるのかも知れません。
お母様、お父様が、惜しみなく「ありがとう」を言い続けることで、いつの間にか、お子様も「ありがとう」の達人になれるのです。
相手の気持ちをラクにさせる「相手ベクトル」の言葉
――『100%好かれる1%の習慣』のなかにある「相手ベクトルで、相手の求めるものを察知する」というのが印象的でした。
松澤:「相手ベクトル」とは、自分本位にならず、相手の気持ちやニーズに適っているかを考える、ということです。私自身、最近とても素敵な「相手ベクトル」の体験をしました。
実は今、インドネシアのバリにハマっています。バリの方って元気な笑顔で、エネルギーをもらえるところが好きで。でも日本に比べるとまだまだ貧しい国です。
それで何かお返しがしたいと考えた時、日本の古着がとても喜ばれると聞き、これだ!と。子どもたちに古着を運ぶチャリティー活動を考えたんです。
すると友人づてに、ママ友が着られなくなった子ども服をたくさん私に託してくださいました。でも、着なくなった古着とはいえ、いただいてばかりだと申し訳ない気持ちになりました。
そんな時、私の気持ちを和らげるママ友さんからのメールが次々に届いたんです。
「着られなくなった服が増えて困っていました。松澤さんのおかげでバリの子どもたちが笑顔で着てくれるだけで嬉しい。遠慮なく受け取ってください」とか、「満足に洋服を買うことが難しい国もある、ということを子どもに教えるいい機会になりました」など、こちらの気持ちがラクになるメールをいただきました。
その言葉に救われ、古着を受け取りやすくなりました。私の気持ちを汲んで、相手の立場に立った優しいお言葉をメールしてくださった方々に学ばせていただきました。