「本当の自分」を愛してくれる人と、広がり繋がって行く世界
旅を進めて行くうちに、フリンは手を怪我してしまい、ラプンツェルによる魔法の髪の力で傷を癒します。
夜になった森の中、焚き火のそばでふたりは自分のことについて話し合います。
その中でフリンは、ユージーンという本当の名前を隠し、フリン・ライダーと名乗る経緯をラプンツェルに話しました。
親の顔も知らない可哀想なユージーンは、本の中のヒーローである「フリナガン・ライダー」をあやかってフリンと名乗っている、と。
そんなフリンに対してラプンツェルは、「私はフリンよりもユージーンの方が好きよ」と伝えます。
初めて言われたというその言葉を聞いて、フリンは少し悲しそうに、それでもちゃんとラプンツェルの目を見てありがとう、と伝えます。
虚勢を張った評判の自分よりも、何にも持っていない自分を愛してくれる人。
きっと、フリンが誰より待ち望んでいたのは、そう言ってくれる人の存在です。
そして、おそらくフリンじゃなくても、「何も持っていなくても本当の自分」を愛してくれる人の存在は、誰もが求めていることでしょう。
フリンがただの「王子様」でなく、現実に生きる私たちのように、どこか心に寂しさを持っていることが伝わる名シーンです。
「何も持っていない」ラプンツェルから広がって行く世界
私はこの作品で好きじゃないシーンは本当にないのですが、特に好きなのが、城下町にやってきたラプンツェルが、音楽に合わせて一人でダンスを踊って行くうちに、町中の人を巻き込んでみんなで踊るシーンです。
最初は照れていた町の人々も、手拍子を鳴らして行くうちにどんどん輪は広がり、いつしか大勢の人々が楽しそうに集まってきます。
この時点でラプンツェルは、町の人々にとって「プリンセス」でもなんでもない、「何も持っていないただの女の子」です。
それでも、人々がラプンツェルに惹かれ、集ってきます。
生まれも、資格も、関係ない。
みんなで歌い踊る楽しい世界を広げ、繋げて行くのは、たった一歩から。
ラプンツェルの純粋な心を信じていれば、どんな新しい環境にも勇気が持って行けるような気がします。