松平「抱っこや持ち上げ作業などをするときに、ストレスを抱えながら、追われながらやっていると、負担のかからないポーズ(ハリ胸・プリけつ:後述)をとる余裕がなくなってしまう。

すると姿勢バランスが崩れ、椎間板への負担が増え、ぎっくり腰などになるリスクも上がってしまいます」

実際に、松平医師らの研究グループが行った調査では、床から物を持ち上げる際、単純に持ち上げ動作を行った場合と比べて、2ケタの暗算をしながら持ち上げた場合のほうが、“椎間板圧縮力がより大きくなる”という結果が得られたといいます。

ストレス下にあると「無防備な状態」になりやすく、同じ動作でも、より腰に負荷がかかりやすくなる可能性があるということです。

松平「ストレスや不安があると、脳の機能が不具合を起こし、自律神経のバランスも悪くなります(交感神経が優位になる)。その結果、腰への血流も悪くなって、腰痛が起こりやすくなる、ということもあります」

前かがみになるときは「ハリ胸・プリけつ」で腰痛借金をためない

では、腰痛借金をためないようにするには? 対策には“2本の矢”があるそうです。

第1の矢は、「ハリ胸・プリけつ」姿勢を心がけること。

松平「かがむ作業をするとき、骨盤を前に傾けることができていれば、腰への負担はかなり減るということがわかっています。

それを集約しているのが『ハリ胸・プリけつ』です。重量上げの選手がバーベルを持ち上げるときのような、腰のケガを防ぐための姿勢だと思ってください」

ハリ胸

「ハリ胸」:両手の中指を肩の骨に当てて、胸を張る
(『腰痛借金 痛みは消える!』より)

プリけつ

「プリけつ」:ハリ胸にしたまま、お尻を突き出して上体を傾ける
(『腰痛借金 痛みは消える!』より)

松平「難しくいうと、骨盤を前傾させて、物体におへそを近づけて持ち上げましょう…ということなんですが、難しくて伝わりづらいですよね。

いい姿勢でいましょうと言っても、あまり心に響かないかもしれないので、とりあえず前かがみの作業をするときには『ハリ胸・プリけつ』、これだけは気をつけてください」

ちなみに、「ハリ胸・プリけつ」で20kgのものを持つ場合には、椎間板圧縮力は「310kg重」にまで下がるとか。腰への負担を軽減でき、腰痛の2大事故を起こす危険水域以下に抑えられます。

赤ちゃんや子どもを抱き上げるときには、「ハリ胸」で、できるだけ腰に近づけてから持ち上げる。おむつ替えなどで前かがみになるときには、「ハリ胸・プリけつ」を意識することが強く推奨されます。

腰痛借金返済はその場で3秒!「これだけ体操」

腰痛借金対策、第2の矢は「これだけ体操」。息を吐きながら3秒間、腰を後ろにそらすだけの簡単な運動です。