2003年にアメリカで出版されて以降、世界的なベストセラーになり、日本でも話題を呼んだ『あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック』という本をご存じでしょうか。

この本は、アメリカ人の小学校教師ロン・クラークが、毎年クラスの子どもたちに教えていた礼儀やマナーなどの「社会のルール」を、教室で起こったエピソードとともにまとめたもの。日本版では、50個のルールが紹介されています。

50個のうちの大半は、日本の家庭でも「当たり前」のしつけとして教えられているものですが、なかには欧米ならではのちょっと意外なものも含まれています。それは、世渡り術ともいえそうなコミュニケーションのマナー。

日本では、一般的に「世渡り上手」や「お世辞」といった言葉が、ネガティブなイメージで語られることが多いですよね。

しかし、これからのグローバル時代を生きていく子どもたちや若者には、今まで以上に積極性が求められるはず。子どものうちに上手なコミュニケーション術を身につけておくと、学校や社会での人間関係がスムーズになるかもしれません。

そこで今回は、上記のルールブックから、「コミュニケーション術」に絞ってポイントを紹介します。

1.質問されたら、お返しの質問をする

著者のクラーク先生は、たとえば誰かに「楽しい週末でしたか?」と聞かれたら、まずその質問に答えた後、「あなたはどうでしたか?」とお返しの質問をするよう、生徒である子どもたちに指導しているそうです。

その理由は…?

相手がきみに関心をもっているのと同じように、きみも相手に関心をもっていることを示すのが礼儀というものだ。

出典(『あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック』ロン・クラーク)

これ、明確に意識している人は少ないかもしれませんが、自然に実践している人は、たいていコミュニケーションや人付き合いが上手な人ですよね。逆に、誰と話しても「すぐ会話が終了してしまう…」という人は、あまり自分から質問しない傾向がある気がします。

クラーク先生は、子どもたちが、質問するというスキルを身につけておくと、将来、面接を受ける場面でも重宝すると述べています。もちろん、先生や大人と話すときの礼儀としても重要ですが、友達と仲よくなるコツともいえるでしょう。

2.プレゼントに文句や不満を言わない

誰かに何かもらったとき、大人社会では、たとえ要らないものでも感謝するのが常識ですが、子どもは正直に「こんなのほしくない」「違うものがよかった」と口にしがち。

しかしクラーク先生は、子どもたちにも、プレゼントに対して不満をいうことは、くれた人の善意を無にする失礼なことであり、許されないと教えるそうです。

たしかに、たとえプレゼントが気に入らないものでも、正直に口に出すより、喜んでいる態度をとった方が、相手を傷つけずに済みますし、関係を損なうこともありません。

「嘘はダメ」と一辺倒に教えるのではなく、「相手の気持ちを考えて、こういうときは本心を言わない方がいいんだよ」と、一歩踏み込んで教えてあげることは必要かもしれませんね。

3.訪問した先では何かをほめる

クラーク先生は、子どもたちに、誰かの家を訪ねたときや、校外学習で博物館や美術館を訪れたときには、「素敵なカーテンですね」「あの絵はすばらしいです」などと、「何かをほめること」を勧めています。

理由のひとつは、招いてくれたことや、家を片付けたり掃除したりして準備してくれたことに対する感謝や礼儀として大切だから。また、ほめることで訪問先の人がリラックスしてくれるというメリットもあるといいます。

ただ、日本の子どもがお呼ばれしたときにやると、「なんて大人びた子なの!?」とビックリされることもありそうです。まずはママが見本として積極的に実践して、子どもが大人になったら自然に実践できるよう、徐々に伝えていくといいかもしれません。