■『ジョジョ』シリーズをおさらいしよう
まず発表会レポートの前に、25年もの歴史を誇る『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズについて軽く説明しよう。
本作はさまざまな時代、さまざまな国の“ジョジョ”たちが、勇気と正義の心をもって苦難に立ち向かっていく物語だ。一部ごとに一人の主人公が描かれ、それぞれの主人公は「ジョナサン・ジョースター」「空条承太郎」のように、必ず名前の短縮形が“ジョジョ”となっている。現在は月刊誌のウルトラジャンプで第八部『ジョジョリオン』が連載中。このへんは旧来のファンでも少しややこしく感じるので、以下に整理してみたい。
『ジョジョの奇妙な冒険』 第一部~第五部 全63巻
(※ここでいったん単行本の巻数をリセット)
『ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン』 第六部 全17巻
(※ある出来事により、世界が一巡。これ以降は別の世界観になる)
(※併記されていた通算の巻数も完全にリセット)
『スティール・ボール・ラン』 実質の第七部 全24巻
(※単行本の巻数をリセット)
『ジョジョリオン』 実質の第八部 2巻まで発売中
第六部までは主人公を変えながらも、必ずなんらかの形で彼らに「ジョースター家」の血が流れている点は共通している。第七部も世界観こそ変わったが、主人公がジョースター家の人間であることは同じだ。“ジョジョ”の名前とともに、血統を、そして能力や意志を受け継いでいく物語と言ってもいいだろう。
ラスボスとなる敵は人間を超越した「吸血鬼」や「柱の男」、そして人間でありながら底知れない能力と悪意を秘めた者など多彩だが、“人間賛歌”のテーマは一貫している。人は弱い。だからこそ正しい意志をもてば、どこまでも強くなれる無限の可能性がある――これが人間賛歌だ。
また、特殊な呼吸で肉体から生命エネルギーを放出する戦闘術「波紋法」、その発展形として生命(精神)エネルギーを自分の分身のように出現させる超能力「スタンド」のアイデアも当時としては非常に斬新だった。本来は見えないはずのエネルギーが、漫画の演出として読者にも“見える”ようになったのだ。これらの能力は無制限に強化できるものではなく、強さの限界があり戦う敵によって相性の善し悪しも出てくる。あえて能力に制限を設定することで心理的なかけひきや戦術が生まれ、「話が進むほどキャラクターの強さが際限なくインフレする」というバトル漫画の大きな弱点を解消できた。以後、現在に至るまで能力バトルを扱った漫画、アニメ、ゲーム、ライトノベルの多くに『ジョジョ』が与えた影響は計り知れない。
【まとめ――『ジョジョ』3つの特長】
・世代を超えて紡がれていく意志
・人間の素晴らしさを描く「人間賛歌」
・生命エネルギーという概念を読者にも見えるようにした(能力の可視化)