ハリウッド大作のように“見せ場”をしっかり押さえた安定した作り方
劇場版コナンシリーズは、小気味よく観客を飽きさせないプロット作りが徹底されています。
開始15分以内に大きな見せ場が訪れ、そこで起きた事件に主人公たちが巻き込まれてゆき、問題を提起。それからそこに絡む人物たちをしっかりと描いていき、謎を散りばめ、中盤では物語をひっくり返す展開を用意して、勢いをつけてクライマックスの大アクションと推理解決へ。
昨今のハリウッドの大作映画でも、観客を飽きさせないためにアクション、恋愛、ミステリーなど複数の要素をつぎ込み、矢継ぎ早に展開させるのは王道となっています。
面白いストーリーのプロットは3幕展開が基本ですが、近年の劇場版コナンシリーズもこの構成に忠実ですね。
今作で言えば、冒頭の殺人事件から始まり、コナンたちが訪れていたテレビ局の爆破があり、そこで物語の大枠が派手な見せ場とともに提示される1幕のなかで、殺人事件と爆破事件、それから平次を巡って和葉と大岡紅葉が争う三角関係の図式が提示されて、どこに注目して見ていけばいいのかをしっかり提示しています。
初めて見る人も、この冒頭の展開を観ただけで、この物語がどこを目指しているのかがわかりやすいですね。
シリーズものの場合「どの作品から見ればいいのかわからない」という悩みを抱えた人は多いかと思います。特に『名探偵コナン』のような、漫画、TVアニメ、映画と多方面に渡って、長期間展開しているシリーズは、全部観るのも大変なので、諦めてしまう人もいるかもしれません。
しかし近年のコナンの映画はどの作品もこうした構成を心がけていますので、予備知識なくても物語に入り込めます。そうやって初めて観た人が、キャラの魅力にハマっていってファン層が拡大してるんだろうなあ、と思います。
今回の展開で、上手いなと感じさせるのは、それぞれの要素が独立せずにしっかりとひとつの線で繋がって展開していくところです。三角関係も、殺人事件と爆破事件、すべてがしっかり1本の線となって絡み合ってきます。
クライマックスも派手なアクションと謎解きの結末で締めて、かつ犯人側の動機につながるエピソードで物語に深みを与えています。事件そのものが恋歌(ラブレター)であるかのような、そんな余韻を残すような犯行動機でした。
今回は百人一首をフィーチャーしたストーリーですが、百人一首は恋を歌ったものが多いですから、原点回帰で、しかも平次と和葉がメインの物語を描くにはぴったりの題材だったと言えますね。