「美女と野獣」(2017年)

アニメーション版は、フランスに古くから伝わる民話をもとに、1991年に制作されました。

1980年代、ディズニーはなかなかヒット作に恵まれず、映画業界で苦戦続き。

そんな暗黒期に公開されたこの作品は、大ヒットを記録したのです。

アニメ映画としては史上初めて、アカデミー賞の作品賞にもノミネートされたほど。

のちに、「ディズニー・ルネサンス」と呼ばれる、ディズニーの第2黄金期を象徴する作品となりました。

さて、多くの人に愛されているこのアニメーションが、エマ・ワトソン主演で実写化されたのは、2017年のことでした。

アニメ版と実写版の大きな違いは、以下の3つです。

  1. ベルがただの「読書好きな女性」ではない
  2. 同性愛のキャラクターが登場する
  3. ベルの母親がいない理由が描かれている

ベルがただの「読書好きな女性」ではない

アニメ版のベルは、小さな村の中で読書が好きな、ちょっと風変わりな女性として描かれています。

読書好きという設定は、実写版でも変わりません。

しかし、実写版では父のモーリスと同様に、機械をいじったり、ロバの力を使った自動洗濯機を発明したりするなど、様々なアイディアを出しています。

また、村の女の子に文字を教える、教育家としての一面も見せています。

アニメ版でも自立した女性として描かれていましたが、実写版ではそれがより際立っていますね。

同性愛のキャラクターが登場する

実写版の公開当時、ガストンの相棒であるル・フウが、同性愛のキャラクターとして描かれているとして、一部で問題になりました。

ロシアでは、16歳以上の年齢制限作品に指定、マレーシアでは、13歳未満の鑑賞に保護者の同意が必要となる作品に指定されるなど、各地で制限が設けられることに。

これまでのディズニーであれば、わざわざ同性愛を描く必要はありませんでした。

しかし、最近では「LGBT」と呼ばれる、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の権利保障が重要になっています。

2019年には、アメリカの連邦最高裁判所から、全ての州で同性婚を合憲とする判決も。

ディズニーとしては、多くの人たちに性的多様性を示す意味で、ル・フウを描いたのでしょう。

ベルの母親がいない理由が描かれている

アニメ版では「魔法の鏡」が登場しますが、実写版には「魔法の本」も登場して、ベルの母親の過去が明かされるシーンがあります。

実はベルが幼い頃、一家はフランスのパリ市内に住んでいました。

しかし、パリではペスト(黒死病)が流行して、ベルの母親も感染してしまいます。

貧しかったモーリスは、やむなくベルを母親から引き離すことに。

この描写は物語に含みを持たせるだけではなく、フランスの歴史にも裏打ちされています。

単なるファンタジーの物語ではなく、実際にその時代に生きた人々として描かれているのです。

新型コロナウイルスが猛威を振るう今、改めて感染症の怖さを実感させられますね。

「アラジン」(2019年)

アニメーション版は、前述の「美女と野獣」とともに、1990年代の「ディズニー・ルネサンス」を代表する作品の一つです。

「千夜一夜物語」の「アラジンと魔法のランプ」が原案として描かれ、大ヒットを記録しました。

実写版はメナ・マスード主演で、2019年に公開されています。

アニメ版と実写版の大きな違いは、以下の3つです。

  1. ジャスミンが身に着けている衣服
  2. 王女ではなく「国王」としての自覚を持つジャスミン
  3. より若いキャラクターに変わったジャファー

ジャスミンが身に着けている衣服

アニメ版で特徴的なのは、ジャスミンが身に着けている、ヘソ出しスタイルのドレスだと思います。

活動的なおてんば娘らしい服なのですが、中東の文化を考えると、ちょっと現実的ではありませんでした。

イスラム教徒が多い中東では、女性はみだりに他人の前で肌を見せません。

2016年には海外のディズニーパークで、ジャスミンの衣装が変わって、大きな話題になりました。

東京ディズニーリゾートでも、今ではヘソ出しスタイルではなく、シースルードレスへと変わっています。

実写版でもこの流れを受けて、中東の文化に合わせた衣服に変わっています。

王女ではなく「国王」としての自覚を持つジャスミン

ディズニー・プリンセスでよく批判されるのが、「男性との結婚=幸せ」として描かれている部分です。

アニメ版のジャスミンは、父親の言いなりではなく、自分の意志で結婚相手を選びたいという葛藤が描かれています。

しかし、実写版では、国王であるサルタンの娘として、国民を想い、彼らのために自ら王位を継ぎたいと考える自立した女性となっているのです。

ジャスミンが歌いあげる「スピーチレス~心の声」は、そんな気持ちを象徴するような楽曲。

ディズニーは新しいプリンセス像として、国王のパートナーではなく、自らリーダーとして進もうとするジャスミンを描こうとしたのかもしれません。

より若いキャラクターに変わったジャファー

中東の国では、年配の男性が若い女性をパートナーとして迎えることは、ごく自然のこと。

アニメ版でも、国務大臣であるジャファーが、ジャスミンに求婚するシーンが描かれています。

しかし、若い女性が虐げられる描写は、ディズニーとしても時代に合わないと考えたのでしょう。

実写版のジャファーは、アニメ版よりもかなり若い男性に変わっています。

暴力的なシーンも削られるなど、より今の時代に合った作品へと変わっています。

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