親子の役割逆転で育った子どもはどうなるか

では、こういった「親子の役割逆転」のもと育った子どもは、一体どうなるのでしょうか?

「ありのままの自分」を受け入れてもらった経験がないから、基本的不安感を持って成長することになります。受け入れられていない不満と不安があるのです。

そして、誰も自分の気持ちを汲み取ってくれる人がおらず、「こうしろ」「こう言え」「こう感じろ」という無意識の欲求を常に受けて育っているので、怒りや焦りを感じてもいます。

コミュニケーション能力も育ちません。

「親子の役割逆転」で育った子どもは徹底的に自己否定されている、と加藤さんは言います。

肉体的にわかりやすい虐待を受けたわけではないのに、じわじわと、しかも親子共にそうという意識もないまま、精神的に虐待されているようなものなのです。

もし、「自分は少し親子の役割逆転の傾向があるかも…」と思い当たってしまう部分があったら、どうしたらいいのでしょうか。

たいていは気づかないうちに進行しているものなので、気づけたのだとしたらそれだけで前進と言えます。

加藤さんは、「もし子育てがうまくいかないときには、何よりも親が自分の幼稚さを認めること」だとアドバイスしています。

誰もが認めたくないかもしれません。自分のダメな部分を見つめるのは、つらいことです。

でも、残念ながら自分は立派な親ではない、と認めることで、最低の親になることだけは避けられるといいます。

自分を責めるでもなく、嘆くでもなく、ただそう認めること。そしてそこから出発することが大事だと、加藤さんは解決策を述べています。

さらに、もし自分がそんな親子関係で育ってしまったと心当たりがある場合は、どうすればいいのか? そこについても加藤さんは解決策を見出しています。

「ただひとつ、離れること。本当に好きな人を他で見つけること。人を見るときに権力やお金でなくパーソナリティーで見て、人の違いを楽しめるようになればベスト」だと。

それができれば、不幸にも「親子の役割逆転」で育ってしまっても、大人になってから幸せになれる道があるそうです。

親なら誰もが、自分の子どもには自己肯定力の強い、周囲から愛される子になってほしいと願っていることと思います。

けれど、無意識のうちに、「こうなってほしい」「こうあってほしい」と自分の願望を押し付けてしまっていることは、誰しもあり得ることです。

無意識の精神虐待、「親子の役割逆転」に至らないよう、子どもからの声に常に耳を傾けられる親でいたいですね。

エディター&ライター。エンタメ誌などの編集を経て、出産を期にライターに。ミーハー精神は衰えないものの、育児に追われて大好きなテレビドラマのチェックもままならず、寝かしつけたあとにちょこちょこと読むLINE漫画で心を満たす日々。