Suara『光の季節』(『あさっての方向。』OP)

Suaraさんが2006年にリリースしたシングル曲『光の季節』も、"夏アニソン"として外せない名曲です。この曲は、テレビアニメ『あさっての方向。』の主題歌として起用されていた楽曲。『あさっての方向。』は、夏景色の中で登場人物たちの思いが交錯する、ちょっとファンタジックなヒューマンドラマでしたが、その物語性に合わせてか、歌も夏の情景を描いた内容となっています。

歌詞の「陽炎」や「金魚すくい」など、夏の風物詩であり、そして、どこかノスタルジーを感じさせるキーワードのチョイスが素晴らしく、リスナーの脳裏に夏景色をありありと想起させるような情景的な歌詞は、この曲の大きな魅力となっています。

そして、そのリリックを伸びやかな声で歌い上げるSuaraさんの歌声はどこまでもエモーショナルであり、ピュアな麗しさを携えています。音数は多いけれども、あくまで歌い手の声を主役とし、控え目に抑えた編曲もバランスが良く、Suaraさんのヴォーカリストとしての表現力と声質の美しさを存分に堪能することができます。

聴いていると、猥雑な日常の中で淀んでいった自分自身の心が無垢なものへと塗り替えられていくような……そんな感覚さえ抱いてしまいます。兎にも角にも、聴き手の心を震わせる情動的なパワーを持った一曲なのです。

『あさっての方向。』というアニメ作品自体も、この曲と同じく、深い情感に裏打ちされた素晴らしい作品でしたが、その作品性をより一層盛り上げてくれた夏アニソンです。

水樹奈々『夏恋模様』(アルバム『IMPACT EXCITER』)

水樹奈々さんの数ある名曲の中から、夏の歌としてピックアップしたいのが、アルバム『IMPACT EXCITER』収録の『夏恋模様』です。

アルバムの中盤にポジショニングされたミドルテンポのバラード曲で、平成仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズの主題歌でお馴染みの藤林聖子さんが歌詞を提供。主人公の一人称視点から、夏の景色を通して青春時代の恋の思い出を描き、過ぎ去った恋人への思いを切々と綴るリリックが非常に秀逸な出来で、美しいトラックも相まってリスナーの心の琴線を震わせてくれます。

そして、その歌詞世界を歌い上げる水樹さんの歌声が素晴らしい! その力強い歌声に加えて、日本情緒溢れる歌謡曲的な歌い回しの表現力にも定評がある水樹さんですが、その歌い手としての魅力を感傷的な夏景色と共に聴き手に届けてくれるナンバーです。

水樹さんの夏のバラードというと、『星空と月と花火の下』(アルバム『HYBRID UNIVERSE』収録曲)も良いのですが、個人的には歌詞の完成度も込みで、この『夏恋模様』も推させていただきます。夏の夜、シットリとした情緒に浸りたい時にピッタリの曲です。

中孝介『夏夕空』(『夏目友人帳』ED)

現在までにテレビアニメシリーズ全6作が制作されている人気作『夏目友人帳』。その主題歌から多くの名曲が世に送り出されてきたわけですが、「夏」なナンバーというと、やはり第一期エンディングのこの曲を選ばないわけにはいきません。

鹿児島県の奄美大島出身の歌手、中孝介さんが歌う『夏夕空』は、「地上で、最も優しい歌声」という異名を持つ中さんの声の魅力と、シマ唄からの影響を受けた独特の歌唱法のエモーションを存分に味わうことができる曲です。

弦楽器の運指の音すら刻まれたシンプルでストイックな演奏の中で響く歌声は、どこまでも広がる大きなスケール感を持ち、『夏目友人帳』という作品が持つ情緒的な世界観に対してのイマジネーションを、より一層刺激してくれます。

『夏目友人帳』歴代エンディング曲の中でも、特に印象的な一曲ではないでしょうか? 真夏の夕暮れ時に、ふと聴き返したくなる一曲ですよね。