ニック・ケイヴ《回転する森》2016年
フォトギャラリー【全19枚】「ヨコハマトリエンナーレ2020」フォトギャラリー
  • 横浜美術館会場内
  • エヴァ・ファブレガス《ポンピング》2019年
  • キム・ユンチョル《クロマ》2020年
  • ツェリン・シェルパ《54の智慧と慈悲》2013年
  • 岩間朝子《貝塚》2020年

2001年から3年に1度開催されている現代アートの国際展、ヨコハマトリエンナーレ。

7回目となる『ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」 』が7月17日(金)に開幕し、10月11日(日)まで横浜美術館とプロット48を主会場に開催されている。

横浜美術館入口
横浜美術館より徒歩7分の場所にある プロット48入口

同展を企画するのは、史上初の外国人ディレクターとなるインド出身の3人組アーティスト集団「ラクス・メディア・コレクティヴ」。キュレーションの出発点として、2019年にラクスは5つのキーワードを発表した。

「独学=自ら学ぶ」
「発光=学んで得た光を遠くまで投げかける」
「友情=光の中で友情を育む」
「ケア=互いを慈しむ」
「毒=否応なく存在する毒と共存する」

新型コロナウイルスの感染が拡大する前に発せられたキーワードが、現時点において世界的な重要性を持って立ち現れてきていることに驚かされる。

同展では、ラクスが提示した5つのキーワードをもとに、30以上の国や地域で活動する65人(組)のアーティストたちが制作した作品を、横浜美術館とプロット48の2つの会場で見ることができる。

5つのテーマが散りばめられた作品たち

ニック・ケイヴ《回転する森》2016年

横浜美術館会場を入ってすぐに目の前に現れるのは、アメリカ出身のニック・ケイヴによる巨大なインスタレーション《回転する森》。

色とりどりの「ガーデン・ウィンド・スピナー」が天井から吊り下げられ、光を反射しながらくるくると回転する様は、まるで宇宙のビッグバンを見ているよう。

しかし、よく見ると銃や弾丸の形の飾りも。幸福感の中に社会の持つ「毒」が見え隠れするという、アメリカ社会の複雑な現実を感じさせる作品だ。

ニック・ケイヴ《回転する森》2016年

竹村京による《修復された・・》シリーズは、こわれてしまったカップや電球、腕時計などが、その傷口を蛍光シルク糸で修復され、暗がりの中で傷口が発光するという作品。

お互いを思いやり、傷んだ心を修復するというテーマが、やさしく「発光」する中に浮かび上がってくる。

竹村京《修復されたK.K.の醤油皿》ほか 2015年-2020年
傷口を蛍光糸で縫う竹村京作家本人

また、会場の一角でひときわ存在感を放っているのは、エヴァ・ファブレガスによる《からみあい》。ピンクやベージュのモコモコした細長い巨大な物体が、タイトル通りからみあっている。

実はこれ、人間の腸をイメージした作品で、私たちのお腹の中で善玉菌や悪玉菌が共生しながら私たちの健康を「ケア」する世界を表現しているという。

エヴァ・ファブレガス《ポンピング》2019年

また、プロット48の会場内で見られるうちのひとつに、ラヒマ・ガンボというナイジェリア出身アーティストによる《タツニヤ(物語)》がある。

一見、無邪気に遊ぶ女子高校生たちの日常が写真で紹介されるのだが、その学校は、西洋教育に反対するグループに何度も襲撃を受けている。

「毒」を内包する社会においても「独学」を続け、「友情」を育みながらお互いを「ケア」し、なおかつ彼女たちの自身の明るさが周囲に「光」を放っている。ラクスの掲げる5つのテーマをすべて内包する作品といえる。

ラヒマ・ガンボ《タツニアヤ(物語)》2017年