子どもが食に興味を持つことで作ること、食卓を囲むことに意欲が
――確かに、あくせくと準備に追われて食事の時間を楽しめていない親は多いかもしれません。
志麻さん:私、フランス人のお母さんを見たときに衝撃を受けたんです。
私の母は料理が好きで、好きだから楽しそうに料理をしていたんですけど、食べるときに一番最後に席についてかきこむように食べて、さっさと洗い物をはじめるみたいな感じだったんですね。今思うと、お母さんて、楽しんで食事してたのかな?って。
フランスのお母さんは「食べること」がメインなんですよ。気楽に料理をして、食卓を一緒に囲んで会話をしながら楽しんで食べているという感じで。そこに衝撃を受けて、なんていい文化なんだろうと思ったんですよね。
料理が苦手な人は作るのも苦痛だろうけど、「食べることを楽しむ」っていう目的のためにみんな料理を作っている、という感じがいいなあと。
――すごく素敵ですね。そういうふうに食事の時間を楽しむ文化だと、子どもも自然と食に興味を持ちそうです。
志麻さん:うちは、私がこういう仕事をしていることもあって、子どもふたりとも食に興味がもともとあるのですが、ふだんから作る姿を見せていたり、長男も2歳のときから包丁を持たせて切らせたりとか、興味のあることはやらせてあげたりしていますね。
余裕があるときは、そうやって手伝ってもらうこともあります。
――2歳から包丁! すごいですね。
志麻さん:私も愛用している包丁がペティナイフなんですが、小さいので子どもでも持ちやすいんですよ。子ども用の包丁って、意外と大きくて怖くないですか?
ペティナイフくらいだったら、おままごとの包丁と同じサイズで刃渡りも短いので、持ちやすいし怪我もしにくいです。
ペティナイフを持たせて、一緒に手を添えて切ってあげるとわりとなんでも切れます。1から全部作って食べたら「おいしいね~」につながるし、おいしくできるとうれしいし、また次につながっていく感じがします。
今ではハヤシライスを全部一から作ったりしています(笑)。
小さいころから自然に、楽しく料理をすることを教わっていれば、作ることを苦に思わないし、好きでいられる。誰からも矯正されていない状態で、遊びの一環で親が一緒にしてあげることで、変わると思います。
大皿から取り分けるスタイルで子どもも責任感が芽生える
――食卓では、鍋やフライパンごと、もしくは大皿でどんと出して取り分けるスタイルだそうですね。
志麻さん:日本は一汁三菜が基本ですよね。フランスは、鍋で煮込んだものをそのまま出して取り分けるっていうスタイルなんです。
我が家は日本とフランスの文化半分半分ですが、料理は和洋中問わず鍋のまま出します。盛りつけなくていいからすごく楽だし、子どもが親と同じものを取り分けるアクションが入るので、そこにみんな意識がいくし、会話も生まれます。
取り分けるのが楽しいし、どのくらい食べられるかも自分から言うようになるので、子どもにとってもいいように思います。
子どもも食べたくないときや食欲がないときが親と同じようにありますよね。自分で食べる量を決めて取り分けるので、それを残したら怒りますよ。でも、それで怒られても子どもも納得がいきますよね。親が量を決めて取り分けたものを残して怒られるのは、腑に落ちない(笑)。
洗い物が減るというのもうれしいですね。
――鍋ごとメイン料理をドンと出すということは、それだけで肉も野菜も入っている感じですか?
志麻さん:野菜がいっぱい入った煮込み料理ならそれ一品でも完結できるし、焼いた肉とかだったら茹でた野菜を付け合わせで出したり、スープやサラダを添えたり。
栄養バランスを考えることももちろん大切ですが、その季節のものを食べようとか、今日は牛肉を食べたから明日は魚にしようとか、そのくらいゆるいバランスで考えていていいと思うんです。