仁寺洞から鍾路3街のシンボル楽園商街へ

仁寺洞側から楽園商街のビルに向かう。写真中央が車道になっている1階部分

ツアーは日本の旅行者にもなじみ深い仁寺洞からスタートしよう。

地下鉄3号線の安国駅から仁寺洞のメインストリートを進み、サゴリと呼ばれる四つ角を過ぎ、その少し先のMGセマウル金庫を左折すると、1階部分がトンネルのように見えるビルが楽園商街(1968年誕生)だ。

鍾路3街のシンボルである。

近くまで来るとトンネルのようなところをクルマが往来しているのがわかる。筆者が子供の頃、初めてこのビルを見たときは、ビルの下を車が走る様子がまるで未来都市のようで、興奮したことを覚えている。

誕生当時、ビル内に映画館やボーリング場などの娯楽施設があったことから、ソウルの富裕層や芸能人が多く住んだが、今は乙支路3街と4街の間にある世運商街のビルとともに、時代遅れの建物の代表だ。

世運商街のほうは新設されたペデストリアンデッキにおしゃれなカフェレストランが立ち並ぶ人気スポットとなり、延命が決まっているが、楽園商街はどうなるのだろうか?

旧市街のあちこちで再開発が進んでいるので、ちょっと心配である。

楽園商街のビルの脇にいくつかある階段を降りると、地下のフロアには野菜、米、精肉、衣類、食器などを扱う店が並んでいてびっくりするだろう。

ミシンを踏む修繕屋のおばあちゃんの後ろ姿はまるで60年代のようだ。

楽園商街の脇の階段を降りると地下市場
楽園商街地下市場にある修繕屋さん。ミシンの音が懐かしい

ここは韓国でも珍しい地下市場なのだ。市場の利用客の多くはこのビルの住人、そして、近所で飲食店を商う人たちだ。

フロアの中央には不揃いなテーブルやイスが並べられた食堂が集まっている。店は4、5軒あるが、境界線が段ボールなどで大雑把に仕切られているだけなので、庶民的なフードコートのように見えなくもない。

 

客は中高年男性が多い。リタイアした人が多いので、マッコリなど昼酒を飲んでいる人も珍しくない。

近くにあるタプコル公園がコロナの拡散防止のため閉鎖されているので、利用客が増えているようだ。

ここでは、そうめんやうどんなどの麺類が2500~3000ウォン(約240~290円)で食べられる。市中よりかなり安く、しかも量が多い。

この値段でもちゃんとキムチが添えられる。

楽園商街地下市場のそうめん(チャンチククス)。海苔やズッキーニがたっぷりでヘルシー

ビルの2、3階に上がって楽器店街を冷やかすのも楽しい。カフェもあるのでそこでひと休みしてもよいだろう。

(つづく)

12月18日(金)夜、チョン・ウンスク「ソウル発オンラインイベント」開催

■第1部(19時30分~20時30分)
鍾路3街の大衆酒場から金曜夜のソウルの空気を伝えながら、2020年の韓国を振り返ります。申し込みはA PEOPLE SHOPまで。
■第2部(20時45分~)の忘年会は満席となりました。

2月7日(日)夕方、チョン・ウンスク「ソウル発オンライン講座」開催

日本のみなさんが約1年間訪問できなかったソウルの街の変化についてお話します。
お申し込みは12月1日(火)から、栄中日文化センターで受け付けます。
 

鄭銀淑:ソウル在住の紀行作家&取材コーディネーター。味と情が両立している食堂や酒場を求め、韓国全土を歩いている。日本からの旅行者の飲み歩きに同行する「ソウル大衆酒場めぐり」を主宰。著書に『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』『釜山の人情食堂』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』など。株式会社キーワード所属。