自分ができないことは遠慮なく友人にヘルプを頼んでいた

--妊娠しながら働いていると、どうしても周囲に迷惑をかけてしまったり、気遣ってもらったりするのは避けられないことかと思います。池原さんはどんな風に対応していましたか?

池原「私が特に気をつけていたのは、『自分でできること』と『できないこと』をはっきり分け、できないことについては遠慮なく友人などにヘルプをお願いしたことです。

例えば『今日はとても体調が悪くて動けないので、夕飯を買ってきてくれない?』などです。

人は万能ではないですし、弱っているときや苦手なことはあります。すべて自分で抱え込まなくては、人様に迷惑をかけてはならない、という『完璧主義』『抱え込みすぎ思考』が、結果的にも、自分や周囲にもいい影響がないということもあります。

弱っているときは素直に甘える、苦手なことは得意な人に聞いてみる。それが『自分も、周囲も、活かしていく』方法だと思っています。

もちろん甘えるばかりではなく、人から甘えてもらうよう、自分ができることも差し出していく。この循環が、仕事においては『チーム』と呼ばれるものだとも思います。

また『迷惑をかける』というのは、妊娠していても、していなくても変わらないことですし、お互い気遣いし合うのは同じだと思います。

ですから、私は困ったことやできないことがあれば、遠慮なく『助けてください』と伝え、もしできなかったら遠慮なく断って欲しい、と断る権利があることをセットで相手に伝えていました。

お願いした相手も私に気遣いすることなく、『ごめんね、今は無理』と言うことができ、はっきり断ってもらうことで、私も『では、またお願いするね』と頼みやすかったです。ヘルプを遠慮なく出す、また断る権利があることを同時に伝えることで、相手と対等な関係を築くようにしていました。

また、妊娠している、していないに関わらず自分が何か助けてもらったら、自分も相手にできることを自分ができる範囲でお返しすることも意識していました」

妊娠中も働きたい女性に伝えたいこと

妊娠中も会社を運営するという池原さんのケースは、これからの時代は多くの女性が体験すると思われます。また会社員の女性も同様に、また出産後の働き方についても悩むことでしょう。

そこで、妊娠中も働きたい女性に向けて、池原さんに妊娠中に「しておいたほうがいいこと」を伺いました。

池原「行政の家事支援や妊婦へのサポートは非常に充実しているので、積極的に行政サービスを活用するといいと思います。民間でも多くのサービスがあり、例えば家事代行や作り置きサービスなど、見つけやすいです。

ですから、妊娠中も出産後も自分のやりがいとか働きがいを持って働きたいと考えている女性には、ぜひメンターを探して話を聴くということをしていただくのをおすすめします。

復帰した後、あるいは妊娠中の働き方において、自分のやりがいを見つけて、より自分らしいキャリアをつくるための方法というのは、なかなか見つけにくいためです。

積極的にメンターとなる先輩を見つけて、働き方のイメージや会社に復帰するにあたっての心構え、仕事上工夫しておくべきことなどを、できるだけ色々なメンターから情報を仕入れておくのをおすすめします」

妊娠中は体調などの戸惑いも大きいですが、個人差もありそれに応じて気を付けるべきなのは前提です。

また、妊娠中にどう働くか、また、出産後の働き方については、なかなか情報が得られないものなので、情報収集はとても大事のようですね。

ぜひヒントにしてみてくださいね。

池原真佐子さん

【取材協力】池原 真佐子さん
株式会社MANABICIA代表

早稲田大学・同大学院、INSEAD卒。PR会社、NPO、コンサル会社を経て(株)MANABICIA創業。女性リーダー創出のための社外メンター事業「Mentor For」運営。女性のキャリア・リーダーシップ支援を通じて、多様な人が働きがいをもてる社会を目指す。2年半のワンオペ育児、2年間のドイツ日本の2拠点生活を経て、現在は日本で事業を展開している。
(第8回DBJ女性新ビジネスプランコンペティションファイナリスト / 東京都知事賞女性パワー翔き賞受賞/ 第5回女性起業チャレンジ制度グランプリ受賞 / ワーママオブザイヤー2018受賞 等)