食べ物屋台だけじゃない
艋舺夜市のある廣州街をぶらぶらと食べ歩きしていると、通りの中央にずらりと屋台が並び始める。
食べ物の屋台に加え、4足100元で靴下が山積みになっていたり、古い日本の歌謡曲や海外映画のDVDがワゴンで売られていたりする。
艋舺夜市は比較的新しく、若者客も多いのだが、一方でシニア向けのグッズも充実しているのだ。
近所のおじいちゃんたちは、こういう屋台でDVDを買ってカラオケの練習をして、茶飲みスナックの晴れ舞台に備えているのかもしれない。
下町らしいかき氷屋さん
廣州街の『豊原排骨麺』の並びにもう1軒、外せない店があった。百年の歴史があるスイーツの老舗、『龍都冰果専業家』だ。
40年前は「台湾といえば蛇の生き血」だったが、今は若い女性を中心に「台湾といえばスイーツ」の時代だ。
台北市東部には洗練されたカフェでインスタ映えするかき氷を食べられる店もたくさんあるが、あえて艋舺で食べるならこの店がおすすめだ。
あか抜けない、丸っこい文字の看板や店内にベタベタと貼られたメニューが昭和感を醸し出していたのだが、2020年の夏に2ブロックほど離れた和平西路3段192号に移転し、同時に店内もすっきりリニューアルされた。
今も昔も変わらないのは豪快なかき氷のトッピング。小豆や緑豆といった定番から、タロイモやピーナツを柔らかく煮込んだ台湾らしいものまで8種類まで選べる。冬は温かくて甘い「粥」で芯から暖まるのもいい。
台湾のこうした伝統スイーツ店では、若い男の子のグループや中高年男性の一人客を見かけることが多く、微笑ましい気持ちになる。素朴な台湾スイーツは、年齢や性別を問わず、すべての台湾人に愛されているのだ。
(つづく)
艋舺とは?
1970年代が全盛期だった艋舺(萬華)は、当時の台湾でもっとも賑やかな繁華街であり、上京者がこぞって目指す憧れの地だった。
日本の東京で言えば上野・浅草のような街だ。かつて艋舺北西部の華西街夜市にはヘビの生血を飲ませる屋台があり、その裏手の赤線地帯ではピンク色のネオン看板が怪しげな雰囲気を醸し出していた。
その辺りの雰囲気は以前本コラムで取り上げた台湾映画『モンガに散る』(台湾ロスを癒す「日本で楽しむ台湾」vol.1【話題の映画】)によく描かれている。
4月23日(金)20時、光瀬憲子のオンライン講座「台湾の夜市朝市」開催
4月23日(金)20時~21時は、オンライン講座「台湾朝市・夜市の楽しみ方」です。7年間の台北在住経験と豊富な取材経験から、台湾ロスが癒せる話がたっぷり聴けます。申し込み詳細は朝日カルチャーセンターまで。