僕の人生では叶わなかったことが叶えられた

ⓒ綿矢りさ・新潮社/「ひらいて」製作委員会

――共演の山田さん、芋生さんとお芝居について話すことはありましたか?

今回はそれが本当になくて。ドラマ『恋の病と野郎組』とか、これまでの現場では自分はあまり言わなかったですけど、周りはよくそういう話をしていたんです。だから今回も「あるのかな?」と思っていたんですけど、ホントに何もなくて。

現場に入るとすぐに段取りに入って、そのまま本番みたいな。あっという間に終わってました。本番中に相手の様子を見ながら、それが脚本には書かれていないようなことでも、臨機応変にやっていく。それが役者ってことなのかな?って思いました。

――ご自分の撮影がなかった日に、山田さん、芋生さんの撮影を見に行ったそうですが、それは何か理由があったのですか?

現場の雰囲気を掴みたいっていう。あとは、スタッフさんともコミュニケーションを取りたかったので。泊まり込みで撮影をしていたんですけど、丸1日オフになる日があって、どうせやることもないし(笑)、見学させてください、とお願いしたんです。

現場に付きっきりで、夏だったので蚊取り線香を出したり、飲み物を持って行ったり。そういうことをしながら、自分が出てないシーンってどういうテンションなんだろう?とか。

愛と美雪がどんなやり取りを辿ってきているのか、その感情を知れば知るほど、たとえが返す言葉の重みみたいなものを増したり、逆に減らしたりもできるとも思ったので。なるべく撮影に寄り添うような気持ちでいました。

――それは役に立ちましたか?

難しいシーンを撮影する前だったので、特にそういうシーンではスタッフさんとコミュニケーションを取れていたからこそ、言葉を交わさずともわかることもありました。

共演者の方とも、相手のお芝居をたくさん見れば見るほどどういう感じで来るか予測もできるので、そこはやりやすくなりました。

ⓒ綿矢りさ・新潮社/「ひらいて」製作委員会

――完成作を観たときはどんな想いがありましたか?

最初は自分がスクリーンの中にいるってことが違和感で。「俺いるわ」って(笑)。あとは当時の思い出が頭の中をぐるぐるしていました。

さっきも言いましたけど、(栃木県の)足利に泊まり込みで2週間くらいいたので、河辺を歩いたこととか、休みの日にショッピングモールで映画を観たこととか。「懐かしいな~」って。

そんなことを考えていたら、作品のことを何か感じる前に終わってしまって。もう一回観たい、というのが感想です(笑)。

――気に入ってるシーンはありますか?

僕は出ていないんですけど、試写を観たときに、愛が暴れたあとに屋上で座り込んでいるシーンが良かったです。映像の色味が愛の心情を表しているようでした。空がちょっと紫色かかっていて、モヤモヤする感じがきれいで。

この『ひらいて』という作品っぽさが出ている映像だな、と。そういう細部にもこだわっているんだな、と思いましたし、すごく目を奪われて感動しました。

――演じた中で青春らしさを感じたシーンは?

文化祭の準備のシーン。僕自身は仕事があったりもして、文化祭というものに一回も参加したことがなかったので。あのときは自分が「最高に青春してるわ!」って思っていました(笑)。

あとは劇中で愛とベランダで花火を見るシーンがあるんですけど、そのとき、少し離れた場所で本当に花火大会が始まって。音が入ってしまうから撮影を中断しなくちゃいけなかったので、その時間は本物の花火をベランダからみんなで見ました。

制服を着て、学校のベランダから花火を見るなんて、僕の人生では叶わなかったことが叶えられて、ホントに「学生してるな!」って感じがしました。