ミュージカル『ニュージーズ』ゲネプロより 写真提供/東宝演劇部

1899年のニューヨークで実際にあった、新聞売りの少年たち(=ニュージーズ)によるストライキに着想を得た同名映画(1992)を原作に、2011年にミュージカル化されブロードウェイで大ヒットを記録した『ニュージーズ』。

その初となる日本版が、小池修一郎を演出に、京本大我を主演に迎えて日生劇場で上演されている。初日公演を夜に控えた10月9日、同劇場で行われたゲネプロを取材した。

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京本大我がカリスマ性のあるリーダー像を見事に造形

ミュージカル『ニュージーズ』ゲネプロより 写真提供/東宝演劇部

原作映画も舞台もかのディズニー製作であり、音楽はアラン・メンケン(『美女と野獣』『アラジン』)、舞台の脚本はハーヴェイ・ファイアスタイン(『キンキーブーツ』『ラ・カージュ・オ・フォール』)とあって、オリジナル版の面白さはもとより折り紙付き。

いきおい小池演出とのケミストリーに注目が集まったわけだが、この相性が実に良い。舞台を左右にも上下にも広く使って登場人物たちの躍動感を何より強調する演出が、重めの社会的テーマの中にもどこかファンタジックな味わいがある脚本とピッタリ合致し、とにかく観やすいのだ。

そんな小池演出の最大の“勝利ポイント”と言えるのがキャスティング。わけても、主人公ジャック役の京本大我が目を見張るパフォーマンスを見せている。

これまで出演したミュージカルでは繊細なイメージのあった京本だが、ひと回り大きくなった体と力強い歌声とダンスとで、カリスマ性のあるリーダー像を見事に造形。特に一幕ラストでは、高い技術とあふれる芝居心の溶け合った、絶唱とも言うべきソロを聴かせてくれた。

ミュージカル『ニュージーズ』ゲネプロより 写真提供/東宝演劇部

ストライキを後押しする新聞記者でありジャックの恋の相手でもあるというバランスの難しいキャサリン役を軽やかに演じた咲妃みゆ、松葉杖をつきながらもしっかりと群舞に参加して身体能力の高さを見せつけたクラッチー役の松岡広大、聡明さと無邪気さが無理なく同居する様がさすがだったデイヴィ役の加藤清史郎ら、脇を固めるキャスト陣もみな好演。

ニュージーズ役のアンサンブルの面々が、まるでなんでもないことのように、そこここでヒラリとバク転を決める姿も印象に残った。

ファイアスタインの脚本には、原作映画とは異なる部分がいくつかあり、ジャックが絵描きの設定になっていることもそのひとつ。彼の絵が重要な役割を果たす展開から伝わる、ファイアスタインの“芸術の力”に対する信念は、芸術が不要不急と言われる今だからこそ余計に胸に響く。

またそもそも、何かと鬱屈しがちな今だから観たい、心が弾む要素に満ちた舞台。機会(チケット)さえあれば、キャストのファンだけでなく、ぜひミュージカルファンやミュージカル初心者にも体験してほしい一作だ。