どう生きる? 名著から学ぶ3つのヒント
1. 自分の感情をごまかしてはいけない
コペル君のクラスには、いつもいじめられている「浦川君」という子がいました。お弁当のおかずが毎日「油揚げ」だけだったので、浦川君はいじめっ子の「山口君」たちから、陰で「あぶらあげ」と呼ばれていました。
あるとき、そんな山口君のことを許せないと思った、コペル君と仲のいい「北見君」は、山口君につかみかかり、取っ組み合いの喧嘩になります。思わぬ事態の展開に戸惑う浦川君でしたが、意を決して北見君をからだで制止し、「山口君を許してやってほしい」と頼みます。
コペル君は、その体験について思いを巡らせます。いつも弱々しい様子だった浦川君に秘められた心の強さや美しさから、さまざまな気づきを得るのです。その話を聞いたおじさんは、コペル君にこんなメッセージを伝えます。
だから、こういうことについてまず肝心なことは、いつでも自分が本当に感じたことや、真実心を動かされたことから出発して、その意味を考えてゆくことだと思う。君が何かしみじみと感じたり、心の底から思ったりしたことを、少しもゴマ化してはいけない。
いろいろな経験を積みながら、いつでも自分の本心の声を聞こうと努めなさい、ということなんだ。(中略)
何が君をあんなに感動させたのか。
なぜ、北見君の抗議が、あんなに君を感動させたのか。
山口君をやっつけている北見君を、浦川君が一生懸命とめているのを見て、どうして君が、あんなに心を動かされたのか。
『漫画 君たちはどう生きるか』より
羽賀「『コペル君、自分の感情をごまかしちゃいけないよ』と。まず自分自身と向き合い、自分の気持ちを知ることが何よりも大事、世の中全体を知るためには、半径数メートルの近い世界をまずしっかり認識することから始まる。
そんなことを伝えているのかなと思いました」
2.小さな経験の意味を考える
「油揚事件」のことを根に持った山口君は、自分の兄に、北見君に仕返しをするよう頼みます。
それを知った北見君は、上級生たちがいつか自分を殴りにくるだろうと、コペル君や浦川君に告げます。コペル君は、もし本当にそうなったら「自分が壁になる」「みんなで北見君を守ろう」と仲間と固く約束します。
しかしコペル君は、仲間を裏切ってしまいます。ある雪の日、雪合戦で遊んでいる途中で言いがかりをつけられた北見君が、山口君の兄を含む上級生たちに暴行されるという事件が起こります。
コペル君はその時、何もできず、それどころか仲間であることを隠そうとします。
コペル君は、そんな卑怯な行動をとった自分を責め、孤独を感じ、苦しみます。そして現実から目を背けようとします。
羽賀「おじさんはいつもやさしくコペル君と接してきましたが、その時初めてコペル君に、『それじゃあいけない』と、強い口調で叱責します。
その後、コペル君のお母さんが自分の思い出をコペル君にさりげなく話して聞かせるシーンがあるのですが、その場面は原作を読んだ時とても印象的でしたし、感想をいただく中でもグッときたという方が多かった気がします」