修学すると学校内での子ども同士のいじめが心配になります。

いじめ自殺事件により、2013年には「いじめ防止対策推進法」という法律が初めて出来たものの、現在もいじめは無くなってはいません。

学校での友人関係でいじめられ、不登校になったり、いじめを苦に自殺してしまう子も後を絶たないストレス社会の中で、一体どうすれば我が子がいじめられずに済むか、更にいじめっ子グループに属さずに済むか、そしてどうすればいじめを減らすことが出来るのか、親としては知っておきたい命に関わる問題です。

そこで、いじめに関する調査を行い、対策を考え、発信し続ける「NPO法人ストップいじめ!ナビ」の副代表理事で事務局長を務める須永祐慈さんに、親が子どもの為に出来る具体的ないじめ対策について話を伺いました。

須永祐慈さん

いじめは無くならない。ならば、いじめっ子を作らない環境作り

ーーいじめは無くならないと言われていますが、それは何故なんでしょうか。

まず「何故、人はいじめてしまうのか?」を考えないといけません。

それについては「その子がストレスを抱えていることによって、そのストレスがその子の攻撃性に繋がる」ということが分かってきました。

そのストレス自体はその子自身が元々持っているものではなく、環境要因によってストレスが与えられている状態です。

その要因のことを「ストレッサー」というのですが「ストレッサー」が多ければ多いほど加害をしやすくなっていく可能性があると言われています。

そういう意味では、いじめはどうやったら加害者を罰するのがいいのかとか、排除するという議論よりも、ストレスを生む環境を子どもたちに作らないようにしていく方法を考えていった方がいいということになります。

それがいじめを防止することになるし、いじめている我が子を生まないことになります。親が我が子をいじめっ子にさせない為には子どもにストレスを与えない、感じさせない子育てをすることです。

子どものストレスは大きく3種類ある

ーー子どもにストレスを与えさせない為にはどうすればいいのでしょうか?

実際に子どもがストレスを抱える場はどこが多いのか、少ないのかは日本社会が複雑なので一概にはいえませんが、活動の中で私が見えている子どものストレスは少なくとも大きく3種類あるように思います。

1つ目は「学校で生み出されるストレス」。これはかなりのウェイトを占めていると思っています。そこには教室内でいじめが起こりやすいという空間、理由もあります。

2つ目は「友人に関するストレス」です。学校の中でも外でも塾やネットの関係でも友人間で生じるトラブルやキャラを演じるなどしたことによって生まれるストレス、恋愛関係でも起こります。

3つ目は「家庭の中で起こっているストレス」になります。親は学校でストレスを感じていないか、我が子が友人間でストレスを感じた時に相談してもらえる環境を作っていけるように、日頃のコミュニケーションが大事であると同時に、親自身が子どもに対して過度な態度を取らないなどの配慮が必要です。

例えば「勉強しろ!」ばかり言うとか、逆に何も関心を持たないみたいなことはしないことです。

親が子どもにストレスを与えない、子どもが家でのんびりとリラックス出来るような空間や関係性を作ることが出来るか?が大事になってくるだろうと思います。

家族以外にもストレス解消が出来る場を見つけてあげる

ーーけれど共働きの親も多く、子どもの為の時間もなかなか取れないと悩んでいる方も多い気がします。

そうですね。親の立場にもっと踏み込んで行くと、「私たちは共働きで昼にコミュニケーションの時間を作るのは無理だし、夜は疲れていて…大変です。出来ないですよ」と仰って頭をもたげる親御さんも居るんですね。

安心する関係性や時間を持つのは日常で難しいと感じられている人の方が多い気もします。

注意すればいいわけではない、じゃあどうすればいいのか? ですが、もちろん親が一生懸命に子どもとコミュニケーションを取ろうとする努力は大事ですが、そういう時こそ、その他の方法をもっともっと考えて欲しいんです。

例えば子どもに学校と家の往復しかない場合は、それ以外の第3の場所があるかどうか?

ストレスを感じなくていいつながりや、ストレスを解消することが出来る日常以外の場所を作ってあげられるような環境づくりをして欲しいです。

中には塾に行くことでホッとする子も出て来ていますので塾に行くという方法もありますね。

でも塾は学校の延長線上にあるので、塾だけで、一部の子を除いて、多くのストレスを解消させるのは難しいと思います。

一方、最近増えて来たのは放課後の学びの場や居場所です。塾よりもゆるい関係でのんびりと皆が遊んだり話したりする空間が出来てきています。

それこそコロナ禍でネット上で場を開設しているNPOも出て来ていますので、そういう所で集まったり、繋がったりすることが出来るという情報を子どもにも教えて知ってもらい、活用したいですね。

ーー家族以外の人と繋がるだけでストレスは軽減されるのでしょうか。

実は日常だけでなく、いざという時に繋がれる所の必要性を知ってもらいたいです。

何か困った時に「先生に言うんだよ。私に言うんだよ」だけではなく、「チャイルドライン」のような子ども専門の相談窓口へ電話したり、チャットもあります。

相談だけでなく、「つまらない」と言うだけでもいいという窓口も出来ています。暇つぶしであってもいいと思います。

他にも今はYouTubeやTikTokが流行っているからこそ、YouTubeで子どもが好きなだけではないコンテンツや情報発信しているものを親が見つけて来て「これちょっと面白いんだけど」と言って子どもと一緒に見てみるとか、伝えていくのも1つの方法です。

いくつものちょっとした情報を親も知って、それを子どもと共有していく。小さなことかも知れませんが、そういう行動も大事なことだと思っています。

それがストレスを生まないことであり、怒りを生んだり攻撃してしまわないようにする1つの予防策です。