いじめを減らす4つの役割と方法を子どもたちに伝える

ーー子どもに「いじめを見てしまった」と告白された親はどうすればいいですか?

その時は、色々な方法があるとお子さんに伝えて欲しいです。傍観者が一番多いわけですから、傍観者が出来ることは通報することなんです。

でも一人で通報するのは勇気がいる、それに報復というリスクがあります。なので皆で報告しに行く。そのために、気になっていることを仲の良い同じ傍観者の人に話してみること。

自分と同じようにちょっと気になっている子を見つけるんです。そうして話していくうちに徐々に具体的な話になっていくかもしれません。

そうなると一人でないことがお互いにわかって来る、同じ感覚を持っている存在に気付けるかもしれない。そうすれば何人か集まって言える子だけでいいから「先生ところに行って、皆で言ってみようよ」と働き掛ける、それが「通報する」ということに繋がります。

通報できる空間が広がれば広がるほど、生徒が言える環境が出来れば出来るほど、先生が早めに対処することができる状況、対応しなくてはいけない状況になっていくと思います。

2つ目ですが、凄くその子が深刻な状態のように感じたのなら、公の場では自分は何も自分は出来ないけれどもLINEなどのダイレクトメッセージで気になっていることを伝えてもいい。そして気持ちを聞いてあげる。

そうやって支えてあげられるような「シェルター(避難所)」の役割を示して欲しいです。これはクラス同士というだけでなく、ネット上で繋がっている関係でも言えることです。

3つ目に出来ることは、傍観者は放置をすることをしたくてしているのではなく、“踏み込めない”という想いがあるからこそ距離をとるんです。

そういう場合は「スイッチャー」になって欲しい。「あの子、生意気だよね」とターゲット化の芽が生まれそうな時に、その子の良い部分を話したりして話題をそらす。そんな風に軽く「いじめは嫌だ」ということを小さなハードルでコミュニケーションしながら話していく。

「ネガティブなものよりポジティブの方がいいよね」と言うことで少しずつ「いじめられる側が悪い」という空気感を「もっとより良い関係の空気の方がいいよね」という流れに変えていくことです。

そんな小さい事を積み重ねていくことで変わることが出来る空気感を皆が「スイッチャー」となって示して欲しいです。

ーー「ネガティブなものより、ポジティブな方が良い」と言って悪口を消して行くのなら、ハードルが低そうでやれそうですね。

「スイッチャー」が増えていけば、加害者側が少数派になっていくんです。クラスのいじめには加害者と被害者だけでなく、必ず応援する人たちが居るんです。傍観者との間にもう一つ応援する人たちが居るんです。

その応援する人たちを外側の空気によってこちら側に取り込む、少なくしていくんです。そうなれば加害者は少人数化していく、そうすれば空気を外側から変えられるんです。

「味方が少なくなってきた」と加害者が感じるだけで、状況は変わって来るんです。そういう意味でも「スイッチャー」という方法も考えて欲しいです。

今あげた「通報者」「シェルター(避難所)」「スイッチャー」が出来なくても、他にも方法はあるように思います。

気になる場合は、その気になったこと見たことを日記などに書いて記録するんです。特に心配なことは「いつ、何処で、誰が、誰に対して、どんなことがあったのか」をメモしておく。

その光景を見た時、自分はどんな印象を持ったのか?を書き綴っておくことも大事です。

いざ、「いじめの調査アンケート」があった時にそこに書き込めばいいし、あるいは匿名で書きたい場合は匿名の用紙にして提出すれば、それが事実として知られて証拠となります。

記録もいじめの対応としては出来ることです。そのことを是非とも親からも言って欲しいですし、このようないじめに対応する具体的方法は複数あることを道徳の授業などにも活用されるべきことだと思っています。

今僕がご紹介した方法は4つですが、その他にも細かい事例や関係性によって状況は変わってきます。

是非とも子どもたち自身が「こういう場合はこう出来るよね」と考えられるような時間や空間、そして関係性が日頃から出来ることが本当のいじめを防止することに繋がっていくことになります。

親が学校に提案出来る、いじめ防止対策とは

ーー親からいじめ防止について学校に働きかける具体的な方法はありますか?

今まで本当の意味でのいじめ防止が出来ていないのは、やっぱり杓子定規の道徳観やモラル教育が中心だったことが考えられます。

「いじめは駄目」というスローガンの下に挨拶運動をやりましょうとか、標語やポスター作りなどを行う学校は多いですが、それらはコミュニケーションの充実やいじめは駄目という動機づけにはなるとは思いますが、具体的ではないし、挨拶運動がいじめを減らしたという直接の根拠も見られません。

つまり直接いじめに対してアプローチが出来ていない。だからこそ他の方法を議論する機会を広げて欲しいと思います。

「通報する」「個別に支える(シェルター)」「周りの空気を変える為のコミュニケーションをとる(スイッチャー)」「メモを取る(記録)」。

まずはそこからでもいいので共有化して欲しいと思います。

親には普段からPTAなどで是非とも学校に「標語だけでなく、もっと具体的な手法について考えたり共有したりしていく時間を持って欲しい」と要望して欲しいです。

親が働きかけることによって学校も先生たちも「しなくては」と考えるベースがつくれると思うので。

親自身の情報発信が、徐々に学校を動かすことで、安心できる子どもの日常へとつながっていくのだと思います。

取材協力:NPO法人ストップいじめ!ナビ

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書籍「いじめを生む教室」荻上チキ著(PHP新書)他多数

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映画パーソナリティとして俳優、監督との対談、イベントが主。TSUTAYA映画DJ、YouTubeチャンネル「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談。東映チャンネル、ぴあアプリでは映画レビュー、スクリーンetc。恋愛心理と心理テスト作りは特技。聞く話す書くことが好きで司会&心理カウンセラーだけでなく、トークイベントを作る映画と人と猫好きな一児の母。