「学校に行きたくない」と突如、子どもに言われたらあなたはどうしますか?

“もしかしたら学校でいじめに合っているのかもしれない”まずはそう疑ってしまうかもしれませんが、「授業についていけない」「そもそも学校が面白くない」など理由は様々だと言われています。

もし我が子が不登校になったり、部屋から出ないという引きこもりになってしまったら、親はどう対応すれば良いのでしょうか?

そこで、1986年から不登校児童や中退した若者の居場所作りを始め、「川崎市子ども夢パーク」の開設に携わり、川崎市の委託により公設民営の不登校児童・生徒の居場所「フリースペースえん」を運営するNPO法人フリースペースたまりば 理事長・西野博之さんに、“学校に行きたくない子どもとの向き合い方”についてお話を伺いました。

西野博之さん

ストレスが不登校を生む

ーーコロナ禍になり、不登校の子どもが増えていると伺いました。原因は何でしょうか?

文部科学省が調査を行い、2021年10月13日に発表した2020年度に30日以上登校せず「不登校」とみなされた小中学生は19万6127人になり、大幅に増えました。

学校でもコロナ感染対策の為に「声を出さない」「給食は対面で食べず、黙食する」「運動会などの楽しいイベントも中止」など色々なものが規制され、学校の先生は3ヵ月間休んだ分を取り戻そうと必死になって勉強を教える。

そもそも学校が楽しくないんです。コロナ禍の影響は色濃く出たと思います。

もともと、小学校1年生から中学3年生までの9年間でいじめのピークは小学校2年生なんです。

さらにショッキングなのは今年の調査で2番目に多かったのは小学校1年生だということです。つまり小学校1年生と小学校2年生にいじめの大きな流れが出来てしまうほど、子どもはストレスを抱えているということです。

日本はもの凄くストレスフルな社会であるということです。

ーー小学2年生の次に1年生でいじめが増えたのにはどんな理由があるのでしょうか?

親たちは、子どもが小さい頃から正しさを求めて、失敗させない、怪我をさせないように「正しく頑張る強い子」に育てようとしています。

そのプレッシャーは強く、親は「他の子どもに遅れをとらないよう、苦労しないように」と考え、とても早い段階から早期教育を行うようになっています。

このようなことから子どもたちはストレスを感じていじめへと繋がってしまうんです。

ーー不登校の原因はやはりいじめも多いのでしょうか?

実は低学年の頃からいじめられて、ある時、「学校に行きたくない」と子どもは言ったりするんです。

その原因の一つに、親による「これだけ頑張ったらご褒美を買ってあげる」「これが出来ない子は駄目」というような“条件付きの愛し方”が上がります。

これでは子どもの自己肯定感を下げ、結果的に不登校や引きこもりになってしまうこともあります。

あるいは親からのストレスによって、暴力やいじめに向かってしまう子どもが出て来ている感じはあります。

ーー「学校に行きたくない」と子どもに言われたら親はどう対応すれば良いのでしょうか?

子どもから「学校に行きたくない」という言葉が出た時は、親はまず焦らないことです。

大体の親御さんは「何バカなこと言ってんの!学校行かなかったら、将来どうなるかわかってるの」と暴言を吐いてしまうんですが、それはマイナスです。

親の不安を怒濤のごとく子どもに叩きつけることで、結果的にもの凄く子どもは委縮してしまい、返って動けなくなってしまいます。

初期の段階では「どうしたの?」と子どもに対して共感的に話を聞いてあげる、そこが基本です。

焦る気持ちを抑えつつ、子どもの話を受け止めることをして下さい。自分の気持ちを語れて、親にしっかりと話を聞いてもらえたら、「学校に行ってみようかな」という思いが芽生える子どもが最初なら随分と居るんです。

子ども自身も「学校に行きたくない」理由がわからない

ーー学校に行きたくない理由としていじめ以外にもあるんでしょうか?

最近、注目されるようになった聴覚過敏、嗅覚過敏のような感覚過敏の子ども達は、椅子を引く音や給食の匂いなど色々なものに苦しんでいます。

けれど親や先生に「つらい」と言葉にして伝えても誰にも理解してもらえないんです。更に大人にとって一番わかりにくいのは「学校に行けない、行きたくない」理由は子ども自身もわかっていないからです。ここが鍵です。

今まで2000人以上の不登校の子ども達と出会って、9割の子どもが、自分が学校に行けない理由がわからずに苦しんでいます。

最初は何となく学校に行けなくなって「何で自分は行けないのか?」を考え、やがて自分を追い詰めてしまいます。

理由は様々で、「勉強がわからない」「先生の体罰が怖い」「いじめられている」「自分が学校に行っている間に親が居なくなってしまうのではないかと不安になって」など色々な理由が複合した結果の状態像として「学校に行けない子」になります。

実は1つの理由で学校に行けなくなる子は滅多にいないんです。

ーーもし、子どもに身体的な異変を感じたらどうすれば良いですか?

子どもが目をパチパチしたり、えへん虫のようなチック症状だったり、手を何度も洗うといった強迫神経症状が出た時は、身体の声を聞いて休ませるしかないです。

そのような状態なのに無理やり学校に行かせようとするのは、子どもの心を壊してしまいます。

それをベースにしておくと大きく心が壊れて長く引きこもるという辛い状況からは回避できると思います。