「皆同じ」「昔はよかった」…永遠のテーマをどう受け止める

座談会に持ち寄られた、ヴィジュアル系雑誌&作品

藤谷:なるほど、他に何か印象に残っているトピックってありますか。

赤西:好きなバンドマンが、「ヴィジュアル系という言葉は差別的だ」というツイートをしていて、「今でもそういうことを言う人がいるんだ」と……。

藤谷:難しいですよね。どのジャンルでもそうですが、そのジャンルとしてくくられることで、そのジャンルのファンに届きやすくなる、その一方で先入観を持って見られてしまう、広がりがない、閉塞感を覚えてしまう……というフラストレーションがあるのは想像がつきます。

ただ、ファンダムを含めてのジャンルじゃないですか、だから、ジャンルのせいにされてしまってはファンとしては悲しいですよね。

赤西:その後も「皆同じような写真でつまらない」「皆同じような曲」という話をしていて……。ジャンルとして確立されている難しさがあるんだと思います。

藤谷:「昔は良かった、今は皆同じ」的な話も、私は四半世紀前の雑誌でも読んだことありますね(苦笑)。

赤西:そんな前から。

藤谷:それがどういう理由で言われているのかっていうのは、発言者によって色々あるはずなので、「聞く耳持たなくていい」とも思いませんし……。永遠のテーマかもしれない。

南:似たようなバンドが多い、みたいな話でいうと、ファン側にもそういった需要があるじゃないですか。「好きなバンドが解散したり、変わってしまったから、昔のあのバンドみたいなバンドが観たい」とか、そういうバンドの影を追いかけてしまうこともある。

「何かっぽい」っていうのはX JAPANやLUNA SEAのような多くのバンドマンがルーツとしてるレジェンド的なバンドじゃなくて、今でいうと例えばDEZERTとか。今人気のバンドを、本家よりもっと小さいライブハウスで身近に楽しみたいみたいな。演ってる側からしたら不健全な楽しみ方かもしれないけど。

藤谷:ちょっと二次創作みたいになっているところはありますよね。コミケを例に出すまでもなく、二次創作から新しい表現が生まれることだってあるので、一概に否定はできませんけど。

それこそ「ヴィジュアル系の様式美」が確立されていたからこそ、あえてそれを崩すゴールデンボンバーみたいな存在が出てきたわけですし。

他ジャンルに侵食する「ヴィジュアル系」というキャラクター

藤谷:この数年、アニメやゲーム、マンガでもヴィジュアル系をテーマにしたものが目につくようになった気がしていて。

もちろん、昔からそれはあったといえばあったけれど、かつては、hideさんやhydeさん、GACKTさんなどなど、特定のミュージシャンをモデルにしたキャラクターが多かった印象があるけれど、現在は「ヒプノシスマイク」の四十物 十四だったり、「ARGONAVIS from BanG Dream!」に登場する、社会人ヴィジュアル系バンド「Fantôme Iris」だったり、特定のモデルは(多分)いないけど、ヴィジュアル系っぽいキャラクターが多い気がします。

昨年放送されたアニメ『ヴィジュアルプリズン』もそうですよね。

赤西:たとえば、『天使禁猟区』は特定のバンドマンをモデルにしたキャラクターだらけでしたよね。『ビジュアルプリズン』は本当に、いろんなところから持ってきてるなって思って、結構びっくりしました。

南:外見だけで言っても、黒い衣装で派手な髪色でメイクが濃くて退廃的な雰囲気で…みたいな一般的なヴィジュアル系のイメージよりも、もうちょっと色々なキャラクターがいましたね。キラキラ系のバンドマンっぽいキャラとか、ロック寄りのバンドに居そうなキャラとか。90年代のバンドとして出てくるキャラクターとの描き分けも面白かったです。