周辺シーンの盛り上がりを眺める、複雑な心境

藤谷:ヴィジュアル系というキャラクター解釈が進んでいるなと思いました。それで言うと、「有吉の壁」に出てきたバンド「美炎-BIEN-」もそうですよね。衣装に和風の要素も入っているのは、近年のヴィジュアル系シーンを参考にしているのかな?と。

赤西:そういうバンドの方が盛り上がってる感もあって複雑です。

藤谷:それはたしかに。「美炎-BIEN-」のMVが数十万回再生されていたり、番組の企画で武道館ライブをやっていたり、ちょっと悔しいなって思ってしまいました。ジャンルと自分の自意識の境界が曖昧なめんどくさい人間なので……。

南:お笑いやアニメではなく、実際のヴィジュアル系シーンは……?という。

赤西:藤谷さんが「マツコの知らない世界」に出たのは2021年ですか?

藤谷:そうです。反響はすごかったし、大変ありがたい話なのですが、Twitterトレンドを見ると……。

南:Twitter見たら盛り上がってるのは90年代のバンドばかりでしたね。

藤谷:それはバンドの規模やお茶の間での知名度などを考えると当然のことですし、自分は90年代のバンドで育ってきたので、それはそれで嬉しいです。

とはいえ、今のバンドをどういう風に紹介すればよかったのか、わかりやすいキャッチーさや「V系と〇〇」的な意外性を強調する以外に(それも面白いと思っていますが)、もう少し幅を広げた紹介をできなかったのは、自分の力不足ではあったと感じています。

“V系界のTOKIO”!? さまざまな「生き残り」のかたち

南:それでいうと、SNSや動画サイトを駆使して、あの手この手を考えている0.1gの誤算はすごいなと思います。中々バンドマンが手を出さないTikTokで戦略的にバズを起こして、新規開拓にしっかり結び付けているので。

お茶の間に浸透とは言わないまでも、ヴィジュアル系シーンの外で着実に知名度を上げているのでは。

藤谷:ダウトも昨年はユッコ・ミラー、かいりきベア、アーバンギャルドなど、いろんなアーティストとコラボする「化樂反応-BAKEGAKU REACTION-」企画などを含めて、精力的に活動していますよね。

南:キャリアが長いと、「まだやってたんだ」的に言われることもあるじゃないですか。先日、Kraのライブに行ったんですけど、20年以上やっているじゃないですか。メンバーが変わってもずっとバンドを続けていて、他に色々なバンドが現れても変わらず応援し続けるファンがいるって、単純に素晴らしいことだなと思って。

赤西:ユナイトも「終わらないバンド」を掲げていますし、ずっと活動してくれています。最近は野菜を作ってライブで売ったりしていたり……。

藤谷:それはもうV系界のTOKIOと呼んでもいいのでは? もはや「まだやってたの/まだ好きなの?」って言われてからが本番のような気がしますよ(笑)。

あるいは、解散してしまっても、KYOKUTOU GIRL FRIENDのように節目の年に、サブスク配信やYouTubeにライブ動画をアップロードして、バンドの歴史を残してくれるような試みもありましたし、いろいろな形で「生き残る」あるいは「歴史を残す」というのはいちリスナーとして嬉しいと感じています。