撮影/稲澤朝博

4月21日より配信がスタートしたNetflix シリーズ『ヒヤマケンタロウの妊娠』(全8話)。すべての男性が妊娠・出産するようになった世界を舞台に、斎藤工が演じる独身を謳歌していたビジネスパーソンの妊娠・出産にまつわる悲喜こもごもを描く。

広告代理店の第一線でバリバリと働き、特定の彼女も作らず自由な恋愛を楽しんでいた桧山健太郎(斎藤)は、ある日突然、自分が妊娠していることを知る。相手はフリーライターの瀬戸亜季(上野樹里)と判明するものの、亜季とは結婚を考えるどころか、彼女とも言えない存在。そんな状態から桧山が子供を産み、育てるまでの日々は、これまで私たちが見過ごしてきたものに新たに目を向けるきっかけをくれる。

本作で妊娠という現実ではあり得ない経験をした斎藤も、この作品と向き合う中でさまざまなことに気付かされたという。撮影の日々で感じたことから、現在独身の斎藤が考える“家族”“結婚”などについて、今の想いを明かしてくれた。

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現代が抱えているさまざまな問題に対しての一つの答えに

©坂井恵理・講談社/©テレビ東京

――妊娠する男性の役を演じるのは初めてだったと思いますが、出演が決まったときの印象を教えてください。

男性が妊娠する設定の作品はこれまでもありましたし、そんなに珍しいという印象はなかったです。映画やドラマは“まさか”を描くことが軸になっているとも思うので、予期せぬ何かが起こるという展開に抵抗感や違和感はありませんでした。

何より原作が素晴らしくて。それは坂井(恵理)先生の実体験が織り交ぜられているからだと思うのですが。だから、一読者として、これをドラマにしたときにどれくらい重いものにするのか、または軽やかにするのか、その配分次第なのでは?と思いました。

あとは、こういう設定に賛否はあると思うんですけど、この作品を通して見えるものは“多様性”に繋がる何かになるという確信が企画をいただいたときからありました。

原作の連載が始まったのは2012年でしたが、それを今、この時代に実写化する意味も感じましたね。物語の終盤に桧山が考えることは、これから必要なダイバーシティやニューノーマルな世界に対して大きなヒントをくれていると。

また、もともとの桧山はロジカルで、良く言うとスマートな人間なんですけど、そんな人間が最終的に「最も信頼できるものは人間だ」という答えにたどり着くのは、現代が抱えているさまざまな問題に対しての一つの答えになるんじゃないかとも思っています。

「誰も犠牲にしない」という桧山が選んだ選択肢は、一人でたどり着いたわけではなく、たくさんの擦り傷は負いましたけど、それを手当てしてくれる人、手助けしてくれる人、そういう人たちの支えがあってたどり着けたので。

©坂井恵理・講談社/©テレビ東京

――妊娠時に起こるさまざまなトラブルなど、妊娠を経験しないとわからないようなことを演じる場面も多かったかと思います。

母や姉などの身近な女性の経験や、これまでいろんな作品の中で描かれてきた妊娠・出産の場面をかなり参考にさせていただきました。

それから、坂井先生がこの原作とは別にご自身の妊娠・出産の経験を落とし込んだ作品(『妊娠17ヵ月! 40代で母になる!』)がありまして。やはりこの物語は坂井先生から生まれたものですから、その作品の坂井先生の実体験にまつわるエピソードが僕の中では一番影響を受けました。