違和感を持っていただけたら
――結婚や家族というものについても考えましたか。
僕自身は結婚をしていなくて、それは今やマイノリティではないとは思いますけど、世間体であったり、マイノリティとしてのバイアスは感じますね。
僕の場合は直接親から言われることはないですけど、間接的なものは普通にありますし。まだ身を固めてないと言うことに対して、大なる欠陥があるんじゃないかと。
そういういった考え方は現代的ではないな、とは思いますけど、その形から生まれた希望という名の新しい命があるわけで。だから難しい問題ではありますよね。
僕の祖母の年代の人たちはきょうだいがたくさんいる方が当たり前で、子育ても親だけがするのではなく、親族がフォローするのが当たり前だった。
もちろん、個人差はありますけど、そうやって子育てを支えてもらえる環境や心の保証があったんですよね。
そう考えると“家族”というものの括り方、半径をどこまでにするのか、というのを考えなくてはいけないな、とこの作品を通して特に感じました。少子化の問題の背景には、やはり子育てをする環境が大事なんだと思います。
――斎藤さんはこの作品を通してどんなことが伝わったらいいなと思っていますか。
欲を言えばなるべくそういった言語で補わない状態で、個々にこの作品を受け止めてほしいな、という想いがあるのですが、その上で一つ、違和感を持っていただけたらな、というのはあります。
物語の冒頭で会議をしているシーンがあるんですけど、その中にいる女性スタッフに対して、男性が「男性の裸があった方がいいでしょう」と、笑えない冗談を言う場面があって。
僕のイメージでは“昭和の会議”かって感じでしたけど、そこで女性が愛想笑いをするんですね。その時に感じる違和感とかですね。
この作品は原作者の坂井先生も監督もプロデューサーも皆さん女性なので、女性が経験してきた社会の中での立ち位置もたくさん描かれていて、そういうところから違和感がたくさん見つかるのでは?と思います。
なぜ違和感を持ったのかを入口にしてもらえると、何か答えを提示しているわけではありませんが、僕らはいろんな違和感に囲まれて生きていて、それは誰しも一緒なんだ、ということにたどり着けるんじゃないかと思っています。
観てくださった方が、今の自分のライフスタイルの中にある景色と重ね合わせて、ポイントをトレースしながら観ていただけると、より深く楽しめる作品になっているんじゃないかと思います。
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「すべての男性が妊娠・出産するようになった世界」を描いた本作。「ありえない世界」を描いているものの、その中で起こるさまざまな出来事は、今まさに私たちの目の前で起こっていることばかり。妊娠を女性から男性の出来事に変えるだけで、当たり前と見逃しているものに気付くことができます。
斎藤さんが語っていた「違和感を持っていただけたらな」という希望が、観てくださった方たちの中に生まれることで、当たり前と思っていたことを改めて見つめ直すきっかけになるかもしれません。
作品紹介
テレビ東京とNetflixの共同企画・製作
Netflix シリーズ『ヒヤマケンタロウの妊娠』
(全 8 話)全世界独占配信中