会場は満員で、男性が半数近くを占めており、関心の高さとムーブメントの波を感じました。
パネルディスカッションでは、特に元妻側改姓当事者として参加された吉田さんのお話がリアルでした。
吉田さんも青野さん同様、妻側からの要望で2006年に妻氏婚を選びました。その後、3人の子どもを持ち、その後、ペーパー離婚、現在は事実婚をしているのですが、事実婚に至るまで、何度も夫婦ゲンカをしたといいます。そのケンカの原因となったのは、姓を変えたことで吉田さんが経験した困難を、妻がまったく共感できなかったことだったとか。
「別姓にすると、家族の一体感が失われるという意見があるが、自分の場合は同姓のときの方が一体感がなかった」というくだりは、会場の笑いを誘っていました。
また、白河桃子さんによると、夫婦別姓のメリットは、今まで「夫婦同姓は日本の伝統」と唱えてきた保守派にも大いにあるとのこと。
過疎地では氏を残すことに縛られて、結婚できない長男・長女がたくさんいます。夫婦別姓が通れば、この問題は一気に解決するという提案に、十数年前までは大反対の声が上がっていたそうですが、最近は風向きが変わってきているというのです。
それだけ過疎地の未婚問題は深刻なのですね。
妻氏婚者は全体の4%
とはいえ、夫婦同姓に不都合を感じて妻氏婚や事実婚を選ぶ人なんて、一部の変わった人だけじゃない? と思う人もいるかもしれません。
実際、妻氏婚を選ぶ人は、全体の4%に過ぎません。
筆者の周りを見回したところ、同じ保育園内で2名、妻氏婚をしている男性が見つかりました。
さっそく、妻氏婚パパ二人にお話を聞いてみました。
まずAさんですが、もともと彼と妻は結婚自体、する気がなかったそうです。が、妻の実家からの圧力もあり、結婚をすることになったときに、彼は、自分の苗字が嫌いだったため、妻の姓を選んだそうです。
青野さんと同じだな、と思ったのは、妻の姓にすることを決めたときに、「おもしろそう」と思ったというエピソードでした。ところが彼も、姓を変える前には考えもしなかったほど面倒な手続きや、世間の無理解に直面し、妻の姓を選ぶということはマイノリティーになることなのだと自覚したそうです。
なかには平気で「養子になったの?」と聞いてくる人もいて、びっくりしたのだとか。
もう一人の妻氏婚者Bさんの場合は、妻の祖母が姓を変えてくれ、と言い出したことがきっかけだったそうです。Aさんとちがって、結婚したら女性が当然夫の姓になると思い込んでいたBさんは、旧姓を捨てることに多少抵抗を感じたそうですが、同時に、多くの女性はこんな風な気持ちになるのか、と初めて気づいたそう。
Bさんは、「夫婦別姓が認められれば、結婚する人は増えると思う」と言っていました。
最後におまけですが、筆者は事実婚者です。うちの場合、妊娠を機に結婚か、という段になって、そもそも結婚(=入籍)しないと子どもを産めないのか、という疑問が沸いてきてしまい、調べるうちに事実婚という形態を知り、さっそく採用。
ですが、最初の子どもが小さいうちは、なぜか他のママ友に事実婚をしていることを言えずに、ポストに二つの苗字が並んでいるのを見られたらどう思われるか、なんてことを気にしていました。事実婚を選びながらも、相当、自分のなかに固定観念があったのですね。
「やっぱり夫婦は同姓じゃないと」派の言い分
夫婦別姓に反対する人たちの言い分は大きく分けて3つです。