『アナログドロップ』誕生の裏には、あの80年代ドラマたちが?
――『スイッチガール!!』の仁香や『圏外プリンセス』の美人、いずれにしてもあいだ先生の描く主人公は、いわゆる少女漫画らしい主人公とは一味違うとすごく感じるのですが、キャラクター作りはどのようにされているのでしょうか?
あいだ:主人公にキャラクターをしっかり入れようとしているわけではないです。ただ、少女漫画のアイコン的なキャラにすると、自分の頭が動かなくなってしまうでんですよね。私は性格的に気が強いところがあるので、受け身の主人公だと描いていて苦しくなってしまう。なので、強さやアクをつけて、キャラクターとして動かせる主人公を考えていくうちに自然に王道ではなくなっていく…という感じです。
――ということは、主人公は先生の分身のような感じで生まれてきている?
あいだ:『スイッチガール!!』の仁香なんかは、まさに私の経験から出来上がったキャラクターですね。ただ、『アナログドロップ』の亜紅は、結構違うものから出てきました。私自身の中にはあまりないキャラクター。これまでの作品であれば、脇役で出てくるようなキャラを主人公に持ってきた感覚で描いています。
――『アナログドロップ』の悪紅は、自分大好きな悪女で、かなり強烈なキャラクターですが、彼女を含め、この作品のコンセプトはどのように誕生したのでしょうか?
あいだ:まず、新連載でタイムスリップものを描こうかという流れになり、私は大映ドラマが好きで、80年代のドラマみたいな熱い感じがいいですよねという話をしていて、80年代に戻る話にしようということになりました。
最初は、普通の女子高生の主人公を考えていたんですが、編集さんから「それだと、受け手になりすぎて、キャラが立たなくなるのでは」と言われて、それもそうだなと思って「じゃあ、悪い奴にしてみたらどうですかね」と軽い気持ちで言ったら、編集さんが「それ、よくないですか?」とはまったので、悪い主人公で描き始めていきました。
亜紅は、今まで描いたことがないタイプなんですが、悪巧みをするというのは結構好きですし(笑)、悪い子がいい奴に感化されていく姿もこれまであまり描いてこなかったので、それを楽しんでいますね。
――大映ドラマがお好きというところから生まれた作品ということは、もしや、不良少年の虎治郎は、松村雄基さんが入っている…?
あいだ:もちろんです!(笑)。家に4、5作品ほど大映ドラマのDVDボックスがあるので、それを掘り起こしながら、不良の格好を描いてみたりしました。大映ドラマで特に好きなのは『ポニーテールはふり向かない』と『スクール☆ウォーズ』。伊藤かずえさんがすごく好きで、『ポニーテールはふり向かない』は、伊藤さん演じる主人公がドラムスティックで戦う喧嘩の強い女の子だったのが、すごくよかったんです。昔から勝ち気な女の子が好きでしたね。
恋愛で悩む人たちへ~「自分の心と向き合ってみて、無理に恋愛をしなくてもいい」
――『アナログドロップ』では、今後、恋愛の展開も気になるところですが、あいだ先生自身が、最も描きたいと思う恋愛はどんな形のものでしょうか?
あいだ:「好きだ! ガーッ!」というくらい固い絆で結ばれる恋愛が好きです。「○○くんが好き」ぐらいではだめで、恋が結ばれるのではなく心と心が合致する、この二人以外で恋愛は成立しない…というぐらい強いつながりを描きたいと思っています。
――男子についても、『スイッチガール!!』の新(あらた)、『圏外プリンセス』の国松や彼方、『アナログドロップ』の虎治郎など、さまざまなタイプを描かれてきていますが、先生が理想だと思うのは誰ですか?
あいだ:それは、新ですね。特に理想のつもりで描いたわけではなかったんですが、無口だけれど気がきいて、女性をちゃんと立ててくれて、でも、いざというとき助けてくれるので、最高ですよね。俺様にならず、でもすごく頼りがいがあって家事もできるし、かっこいいなと思います。
――ここまでお話を伺ってきましたが、恋愛至上主義とはまた違う形で女の子たちの恋を描かれてきている先生から、『圏外プリンセス』の美人のように恋愛ができない、うまくいかない…という女子たちに助言を贈るとしたら、どのようなものでしょうか?
あいだ:恋愛で悩めるのは素敵なことだと思うのですが、上手に恋ができない…という人は、もしかしたら、恋愛が必ずしも好きではない、生活に合っていない場合もあるかもしれないと思います。「みんながしているから」と無理しているかもしれない。
私自身も「恋愛向いてないな」と思うときがあって、でも、今は「それはそれでいいんじゃない?」とも感じていて。これは自分で言ってて悲しくもあるんですが(笑)、自分の心に聞いてみて「恋愛好きじゃないかも」と思ったら、無理にしなくてもいいんじゃないかなと。
特に学生さんなどは、「周りがやっているから自分も同じように」と思ってしまうかもしれないですが、面倒だったら、恋愛しなくていいし、インスタもやらなくていい。好きなことをして、ストレスがないのが幸せなことだと思うので、恋愛ができなくて悩んでいるのか、恋愛をしたくないけれど「しなきゃいけない」という思い込みで悩んでいるのか、一度自分の本当の心と向き合ってみてもいいんじゃないかなと思います。
――最後に、2018年が始まったばかりということで、今年、あるいは今後の展望をお聞かせください。
あいだ:同じことを続けていると私は飽きてしまう性格なので、漫画でも日常でもやったことのないことをやりたいですね。『アナログドロップ』も、タイムスリップの話を描くのが初めてで、バトルシーンを描くのがどうしても好きなので、そこに寄っていくところはあるかもしれませんが(笑)、これまでとは違う作品になっていったらいいなと思います。
最近はやばいことを暴露したい衝動にかられていて、どうやったらできるかとも考えているので(笑)、新しいことに挑戦して、いつか「やったぞ、こいつ」と思ってもらえるような面白いことをやりたいとも思っています。
ギリギリの危ない橋を渡るところが、私はやっていて楽しいですし、読者の方々も「こんなこと描いて大丈夫?」と思いながら楽しんでくれていると思うので、そこは臆せずにやりたいです。
――『アナログドロップ』の今後の展開含め期待しております! 本日はありがとうございました。
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