人間性を疑ってしまうようになって…
「その言葉を聞いて酔いが冷めてからは彼女とうまく会話ができず、何ていうかショックが強くて目を合わせるのも動揺しました。
何とか駅まで彼女を送り、帰宅してからもその子が不倫していたという過去へのモヤモヤが消えず、心が落ち着きませんでした。
どうしてこんなに気になるかって、不倫は奥さんがいる男性を奪うってことじゃないですか。
芸能人が不倫すれば大きなニュースになるし、傷つく人がいるとわかってやっているわけで、どう考えたってまともじゃないですよね。
『そんなことができる人なのだ』と思うと、僕の前では見せない裏の人間性みたいなものを疑ってしまって。
会社で彼女が結婚している同僚と楽しそうに話している姿なんか見かけると、こいつとも付き合えるのかなんて思ってしまう自分が嫌でした。
彼女も僕が微妙に距離を置いていることに気がついてあまり話しかけてこなくなり、退社後のLINEもふたりで食事に行くことも、なくなりました。
後になって『私が不倫していたことを知って嫌いになったのだろうと思った』と彼女に言われましたが、そのときの僕は確かに抵抗が強かったと思います。
彼女は『話したことを後悔している』と何度も言っていたけれど、それについては、今も知ってよかったのかどうかはわかりません」
また距離が縮まったきっかけとは
「しばらくはそんな感じで彼女とは離れていたのですが、業務で一緒になると、やっぱり真剣に取り組む彼女の姿には『いいな』『僕もがんばろう』と素直に思えることが多くて、少しずつまた会話する機会が増えていきました。
不倫していた過去はあっても、いま僕が知っている彼女は仕事熱心でほかの人を助けることも嫌がらないし、遅刻や無断欠勤などもしない真面目な人なのですよね。
これまでおかしな噂など聞いたことがなく、そういえば社内でも特定の誰かとすごく親しいみたいな話は知らなくて。
だからこそ不倫の衝撃が大きかったのだと気が付きました。
過去について抵抗を感じるのも確かだけど、目の前の彼女は、わだかまりができた僕に対しても笑顔で挨拶してくれてあれこれ弁解するようなこともなくて、その潔さが好きなのだと改めて思いました。
僕が割と優柔不断で仕事でも決断が遅れるときがあり、それをカバーしてくれるけど恩着せがましさがないところに、最初に惹かれたことを思い出して。
過去は過去として、いま現在のこの人を見るほうが、僕にとっては気持ちが前向きになれましたね」