「ノガリ」横丁が有名無実に!?

【ソウル乙支路3街】2021年の「満船HOF」本店前。そのけばけばしい店構えからは、この横丁の歴史に対するリスペクトがみじんも感じられない

今、ノガリ横丁を謳歌している若者たちは、こんな歴史物語にはあまり興味を示さないようだ。

2019年にピークを迎えたと思われた人出は2020年のコロナ禍で激減したが、我が国が「withコロナ」を打ち出した2021年頃から再び活況を取り戻し、今夏は大変な賑わいだった。

私も先日、「OBベオ」を偲ぼうとかつての店舗の前で生ビールを飲んだ。

不本意だが、この場所で飲むには、「満船HOF」の売り上げに貢献するしかないのだ。

「生ビール一杯ください!」

周りの女性客の嬌声が姦しいので大声で叫ぶ。

ビールのジョッキを運んできてくれたのは東南アジアの若者だった。これもノガリ横丁の新しい風景である。

日本の人の目には、韓国はあらゆるものが速く変化しているように見えるかもしれないが、ノガリ横丁のダイナミックな変化には韓国人の私も驚いている。

2010年代の半ば頃まで、横丁で目立ったのは周辺の工場や商店で働く労働者や店主、登山客、そして、中高年サラリーマンが主で、明らかに男性が多かった。

それが今では、ニュートロ(ニューレトロ)の発信地、乙支路のホットプレイスとして、20~30代男女の遊び場になっていて、どちらかというと女性が目立つ。

かつての「OBベオ」の前で生ビールを飲みながら周りを見渡してハッとした。

少なくとも半径20メートル以内では、私が最年長だと気づいてしまったのだ。

2010年代前半、私をこの横丁に誘ってくれた先輩たちは、みなどこに行ってしまったのだろう?

【ソウル乙支路3街】かつてのノガリ横丁の利用者は中高年が多かった。2012年、「OBベオ」で撮影

私のテーブルの隣には20代後半くらいの男性2人がフライドチキンをつまみにビールを飲んでいる。

そして、向かいの20代半ばくらいの女子会3人組、その隣の女子会4人組も、チキン片手に豪快にジョッキを乾し、おしゃべりに花を咲かせている。

彼らにとってノガリは固くて噛みづらく、腹持ちせず、古くさいつまみなのだろう。

最近はニンニクのすりおろしをたっぷりのせたガーリックチキンが人気メニューらしい。

そのうち、この一帯はノガリ横丁ではなくチメク(チキン+メクジュ=ビール)横丁と呼ばれるようになるかもしれない。