韓国の今を伝えるコラムの14回目は、日本と比べると一般的でない韓国の希少な立ち飲み屋さんの話題。
ソウルの鍾路3街(チョンノサムガ)エリア、宗廟(ジョンミョ)の西側にあった2軒のうち1軒が廃業。
残る1軒が仁寺洞寄りに移転してリニューアルオープンしたので、さっそく行ってみた。
ソウルでは数少ない立ち飲み屋さん
日本では都心部なら駅前にかならずある立ち飲み屋だが、じつは韓国では一般的ではない。
筆者が10年ほど前に見つけたのは鍾路3街エリアの東の端、朝鮮王朝の歴代王を祀っている宗廟に面した静かな通りだ。
立ち飲みに慣れている日本の人たちに教えたいと、自著やWebコラムで取り上げたものの、もともと高齢者の多い鍾路3街エリアのなかでもこの店にはとくにお年寄りが多く、おしゃれな立ち飲み屋とはほど遠かったので、日本の人に喜んでもらえるかどうか正直不安があった。
だが、それは杞憂だった。
驚いたのはこの店に来て喜んでくれたのが日本の酒好きの男性だけでなく、女性も多かったことだ。
理由は、立ち飲み屋の客と日本の女性旅行者の利害の一致である。
立ち飲み屋で飲んでいるのは、お金はともかく時間には余裕のある60代以上の男性だ。
こう言ってはなんだが、彼らにとって自宅が居心地のよい場所とは限らない。
家では妻や嫁に「日中は外にいてほしい」と思われている可能性は否定できない。
そんな彼らが昼酒を楽しむときに、たとえ言葉が通じなくても女性が近くにいたら、悪い気はしないだろう。
実際、私が日本から来た女性2名(40代)をこの店に案内したとき、常連さんの一人が私を通訳にして2人と話して盛り上がり、「ようこそ韓国へ! これは私からの感謝の印です」と、私を含めて3人に1万ウォンずつ小遣いをくれたのだ。
日本女性2人は大喜びで常連さんと乾杯を繰り返し、記念撮影を楽しんでいた。
小遣いをもらえることなど、そうあることではないが、日本の旅行者、とくに私のコラムを読んで韓国に来てくれる人は、観光や買い物だけでなく現地の人との交流をなによりも楽しみにしている。
立ち飲み屋はそのかっこうの舞台なのだ。
日本女性だけではない。この店では韓国のお年寄りと気軽に話せるから通っているという男性も少なくない。