今回の撮影で「ジャズってカッコイイな」って心から思った

©2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 ©2008 小玉ユキ/小学館

――佐世保ロケのオフ時間で印象に残っていることはありますか?

知念:東京ほど時間がせかせかしていないですし、人にペースを合わせなくていいので心地良かったです。リラックスして生活できますし。焼肉屋さんがたくさんあったので、大志とふたりで「どの焼肉屋が一番美味しいか」って毎晩食べ歩いて(笑)。

実際に住みたいくらい良いところでした。大志には冗談で「ちーちゃん、ここに別荘買ってよ」って言われてました。

――劇中には様々なジャズの名曲が登場しますが、好きな曲はありますか?

知念:元々ジャズダンスをやっていたということもあってジャズは聴いていたのですが、やっぱり『Moanin』は印象的ですよね。あと『My Favorite Things』はCMでもおなじみで、皆さんも聴けば「知ってる曲だ!」ってなると思います。そういう広く知られている曲を演奏できることが楽しみだったので、ピアノの練習も楽しめました。

――ピアノの練習は相当ハードだったのではないでしょうか。

知念:練習は2016年の9月くらいにスタートしました。最初は『Moanin』のイントロ部分だけできるようになって、ぎこちなくやっと弾けたという感じだったんですけど、周りの大人たちがすごく褒めてくれて(笑)、それが結構モチベーションになりました。

家で練習する時も「次はもっとうまく弾いてみせたいな」という気持ちになれたので、そういう部分は薫君と同じ気持ちになれたのかなって思います。

――ひたすら弾きまくって、という感じで?

知念:ジャズの先生に劇中で演奏する構成を聞いて、それをひとつずつ順番にやっていくという感じでした。僕は楽譜が読めないので、ひとつひとつ見て覚えて。振り付けだと思ってやりました。音が間違っているか、合っているかは分かるので、音を確かめながら。

――では楽譜は一切前に置かず、先生の指の動きと音だけで! 驚きです。

知念:そうですね、楽譜があっても僕には何の役にもたたないので(笑)。そうやって練習を続けてきたんですが、文化祭のシーンの練習に入った時は「これ大丈夫かな、長いな……」って不安になりました。でも、練習しながらなんとかできたので良かったなあと。時間をかけてやったので体にもちゃんと入ってくれたんだなと安心しました。

――中川大志さんとの息もピッタリでしたね!

©2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 ©2008 小玉ユキ/小学館

知念:撮影中の佐世保の体育館にもピアノとドラムが置いてあったので、大志と一緒に合わせて練習をしていました。セッションって本当は互いに目を合わせながら演奏していくものですけど、撮影ではどこで目を合わせるかという“逆算”みたいな感じで。それはそれで結構大変でしたね。

――練習が嫌になることはありませんでしたか?

知念:ラストシーンと文化祭のピアノ演奏シーンは途中で早弾きがあったので、練習もすごく難しくて。「撮影のテクニックで(指を映さないなど)どうにかならないかな……」とも思いました(笑)。でも先生が「できるできる!」っていつも背中を押してくれて、その勢いで練習ができたので、なんとか体に入れることができました。

――ちなみに、伊野尾さん(Hey! Sαy! Jumpでキーボードを担当)に何かアドバイスはもらいましたか?

知念:いえ、特には聞きませんでした(笑)。僕も今回のために電子ピアノを買ったので、キーボードを借りたりすることもなく。でも、ライブで伊野尾さんが弾いているところを見るとすごく気になって、弾いてみたいなと思いつつ「いや、僕はこのステージでは無理だ」って思ったり。ライブのバンドシーンでは伊野尾さんのソロは近くで見ちゃいますね。

――文化祭のシーンはもちろん、教室での指と鉛筆でのセッションとか、素敵なセッションシーンがたくさん出てきます。知念さんの特にお気に入りのシーンはどこですか?

知念:文化祭はやはりピークとなるシーンだと思います。緊張もしましたし、やりがいのあるシーンだったので。どのセッションも、ドラムの音を聴いたら「僕も弾きたいな」って思うんですよね。だから、まだ僕を撮るシーンじゃないときも、ずっとピアノを弾いていました。

――本当にどのシーンも素晴らしくて、知念さんと同世代や下の世代など若い方たちもジャズに興味を持ちそうですよね。

知念:そうなっていただけたら本当に嬉しいです。若い子たちはジャズに馴染みがあまりないと思いますが、僕も今回の撮影でジャズってカッコイイなって心から思ったので、僕や大志君世代のみんなにもそう思ってもらえたらなって。