新しい人と出会うことが、昔より恐くなくなりました

――作品の舞台が50年以上前ということもあり、知らないものや風景がたくさんあったと思うのですが。

©2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 ©2008 小玉ユキ/小学館

知念:公衆電話で、薫が律ちゃん(律子)に電話するシーンの「もしかして親が出るかもしれない……」というドキドキは体験したことがなかったので新鮮でした。僕の母親の世代はそれが当たり前だったと思うので、面白いですね。

レコードの使い方も分からなかったので、監督に教わりながらやりました。緊張すると針がポロっと落ちちゃうんです。

――今どきの20代である知念さんからしたら、言動も驚くことがあったのではないですか?

知念:でも、僕自身があまり最近の人っぽくないというか。流行りにもあまり乗らないですし、昔っぽい人なのかもなあと思います。あとは衣装も大きくて。あれを着ることで当時の気分になれました。

――糸電話のシーンもありました。今だったらメールやLINEで自分の気持ちが伝えられるかもしれないのに、すごく奥ゆかしくて可愛いですよね。

知念:そうですね。会話の部分でも、これまでに感じたことのない苦労があって。映画の最初の方での律ちゃんとの会話で、僕がブツブツ言っているシーンがあるんですが、監督がなかなかカットをかけてくれなくて。練習していたシーンとは違うものを本番で求められているんだなと、緊張しました。アドリブ、苦手なんですよね(苦笑)。

――映画の中で、薫は千太郎と出会って変わり、千太郎も薫と出会って変わったわけですが、知念さんにとってそういった大きな出会いが過去にありましたか?

知念:出会い……どちらかというと僕、東京に出てきてから暗くなったというか、人とあまり喋らなくなったんです(笑)。人との距離感の取り方がわからなくなったというか、知っている人が全くいなくて環境の変化に戸惑っていたんですね。その感じのまま、自分ひとりで恐がっている部分があって。

でも、薫君もそうですけど、みんな自分の味方なんだな、人って優しいんだな、ってことに最近気付いて。そういう意味では、新しい場所に行くことや新しい人と出会うことが昔より恐くなくなりました。

――本作では家族のあり方についても描かれていますが、知念さんにとって家族とはどのような存在ですか?

知念:僕にとっては自分の家族が理想というか、良いなと思っていて。僕は思春期の反発みたいなものはなかったし、母親とは友だちみたいに接しているんです。母親からもそう接してくれるのが嬉しいし。母親のことはずっと守っていきたい存在です。

――お母様も映画を観ることをとても楽しみにしていると思います。今日はどうもありがとうございました!

『坂道のアポロン』
2018年3月10日(土)全国ロードショー
配給:東宝=アスミック・エース