銀行の収益構造の変化
このように銀行は、振込手数料や引落手数料などで一定の利益を確保しながら、私たちから低金利で集めた預金を個人や企業に貸し出しを行い、預金と貸出の利ザヤを稼ぐという金利収入がかつての銀行の主な収益源でした。
景気が良い時は企業も個人もお金をたくさん借りたいというニーズがあるので、預金金利も貸出金利も高くなっていきますが、景気が悪化し、お金を借りたいというニーズがなければ、銀行はわざわざ預金を集める必要がありません。
つまり、銀行にとって預金は「借金」ですので、貸出先がなければわざわざ預金金利を高くしてお金を集める必要はないということですね。
実際、バブル崩壊(1991年頃)後、地価や株価の下落が続き、日本経済のデフレが進行していく中で、企業の再編や法的整理が増加したため、銀行には多額の不良債権が発生しました。銀行は不良債権の傷を広げないために企業へお金を貸さなくなっていきます(貸し渋り)。
しかし、銀行が貸出金の原資となる預金を積極的に集めなくても、私たちのお給料は銀行に振り込まれますので、預金の残高は少しずつ増えていきます。つまり銀行にとって使い道がない借金をただ増やしているような状態とも言えるのです。
銀行は、預かっている預金を貸し出すだけでなく、日銀に預けたり、国債や社債などを購入したりすることで収益を確保しようとしているのですが、国債などの金利は貸出金ほど高くないので利ザヤをあまり稼ぐことができません。
景気が低迷することで銀行も収入が先細りになることがわかっていたため合併を繰り返したり、店舗を統廃合したりとどんどん効率化を図っていきました。
みなさんも銀行の名前がコロコロ変わるなぁと感じた時期があったかと思います。
投資信託や保険は銀行の新たな収益源
繰り返しになりますが、貸出先が増えず預金が増えるということは借金が増えることを意味しますので、預金(負債)が増えすぎると銀行の経営は大丈夫なの?という心配もでてきます。
銀行にとっては、預金をいかに減らすかが大きな課題となりました。預金を減らすといっても、給与口座や年金口座に指定されているものを止めることはできません。これらの口座がないと銀行のもう一つの収入源である振込手数料や引落手数料まで無くなってしまうからです。
給与振込や年金振込に指定すると預金金利やローン金利が少し優遇されたりする経験がある方は銀行が給与口座や年金口座を重要視していることがイメージできるのではないでしょうか。
では、どのように預金を減らすかというと、預金が入ってくるのを防ぐのではなく、入ってきた預金で別の商品を買ってもらい、なおかつそれが銀行にとってメリットがあるものでなければなりません。それが投資信託や保険ということです。
銀行で投資信託や保険が販売されるようになったのは20数年前からです 。1998年に銀行で投資信託の窓口販売がスタートし、2001年より保険の窓口販売が段階的に緩和され、2007年に全面解禁されました。
私たちにとっては、馴染みのある銀行で投資信託や保険が買えるようになるということは、ワンストップで色んなサービスを受けることが出来るのでメリットとも言えますね。
一方、銀行にとってはどんなメリットがあるのでしょうか?投資信託や保険は、銀行にとっては他社の商品を取り次いでいるようなものです。預金からこれらの商品を買ってもらうことで預金を減らすこと(負債の削減)ができます。
さらに、私たちや投資信託や保険を取り扱っている会社から手数料を手に入れることもできるわけです。