「あなたしかいなくて」の鎖

「聞いていた旅行の日程の次の日、A子から無事に帰ってきたこと、お願いを聞いてくれて感謝していることなどが書かれたメッセージがLINEで届きました。

『誰にもバレていないから』ともあって、その自信はどこから来るのだろうと疑問が湧きましたが、言い争いになるのが嫌でスタンプを返して終わらせましたね。

それからもA子からは電話やLINEで不倫相手の話を聞かされるようになり、大変だけどいかに既婚の彼から愛されているかのノロケ話、反対に離婚してくれないことへの愚痴などもあって、最初は耳を傾けていましたがだんだんとしんどいなと思うようになって。

結局、不倫って先の見えない関係で、どれだけ愛していると言われようと相手が離婚しない限りまっすぐ結ばれることはないですよね。

奥さんとの仲は冷めきっていると言いながら休日は奥さんと子ども最優先で過ごす矛盾を見れば、A子は本当に『肉体関係を持つだけの女性』でしかなく、男性の都合よく言いくるめられているのがわかるのです。

『本当にあなたのことが好きならまず奥さんと離婚するよね』と言いたくなるのを堪えながらA子のノロケ話を聞くのが苦痛で、そのうち次の用事があると断って早めに切り上げるようになりました。

私が逃げ腰になっているのに気づいたA子から『こんな話ができるのはあなたしかいないの』と言われ、その代わりにランチをおごるからとまで提案され、渋々と付き合っていた感じです。

最初に不倫を打ち明けてくれたときは明るかったのに、交際が進むにつれうまくいかないことの多さに落ち込む姿が多くなったA子を見ると、放ってはおけない気持ちもありました。

いま思えば、『あなたしかいないの』という言葉が鎖のように頭に絡まっていたのかもしれません」