「距離を取る」のはお互いの姿を正しく受け止める姿勢

「他人とは距離を取るのがいいよ」というと、「それは冷たいのでは」「突き放すことになるのでは」とネガティブに捉える人は一定数います。

強い関心を向ける人にほど心のつながりを求めるのは誰にでもあり、「常に同じ」であることを考えるのは当然ともいえます。

距離感を悪いものと感じる気持ちはわかりますが、相手と感情をべったりとくっつけているような状態は、隙間がなくお互いの姿を正面から見ることができません。

心が癒着していると少しのすれ違いや衝突でも感情が大きく動き、自分の意に沿わないことでも「相手のために」我慢するのが当たり前となるときもあります。

相手の姿をきちんと離して見ることができれば、それがどういう状態なのか、自分にとってはどうなのか、を冷静に考える余裕が生まれます。

そのとき、相手と距離があることが自分の在り方もまた振り返る余裕を生み、接し方や関わり方をどう変えていけばいいかを考えられます。

「人と距離を取る」とは、拒絶のような壁を立てるのではなくお互いの姿を正しく受け止める姿勢です。

相手が「Aにしたいな」と言うとき、「仲良くいなければ」と我慢して合わせるのではなく、自分はBもいいなと思えば「Bはどう思う?」と尋ねることができるのが正しい距離感と筆者は考えます。

相手と気持ちや意見が違っていても、それを悪いとするのではなく違うと理解したうえで「ふたりにとっていい道」を選べるのが、居心地のいい関係です。

合わない人やストレスを感じる人の場合は、この「自分との違い」を無理に何とかしようとするのではなくそのままで置いておく、こちらが常に沿っていく側になるのではなく「私は別の道を」ときっぱりと離れる意思が、お互いにとってネガティブな感情を深くしないやり方。

心の距離を取ることで、相手もまたこちらの選択を見て自分のやり方を振り返ります。

深い関わりばかりが人間関係の正解ではなく、合わないものは触れずに遠ざけておくのが、何より自分がストレスを溜めない選択なのですね。