見直し案の内容
そんな税制優遇がある退職金ですが、2023年6月に政府がまとめた方針「経済財政運営と改革の基本方針」で、退職金課税制度を見直す方針が盛り込まれました。
しかし、制度設計次第では一部の人にとって増税につながりかねないという批判があり、2024年度税制改正では見送ることが決まりました。
格差の是正
もともと今回の見直し案の方針が出された背景には、同じ会社に長く勤めるほど税制優遇がある退職金課税制度を改め、勤続年数による格差を減らすために方針として盛り込まれました。
終身雇用制度の導入を見直す企業も増えた今、早期に転職すると退職金の受け取りで不利になる状況を解消し、雇用の流動性や労働力を成長分野へシフトしやすくする政府のねらいがあります。
今後の対策
2025年以降に年金制度と一体で改めて退職金課税制度の見直しが検討されていますので、退職金の税制改正を不安に思うだけでなく、先を見据えて今から老後の資金計画を立て、退職金以外の資金を自助努力で備えていってはいかがでしょうか。
退職金以外にも、退職時に受け取れる福利厚生の一部でもある企業型の確定給付年金や確定拠出年金制度を備えている会社もありますので、制度について分からない場合は勤務先の担当部署に確認しましょう。
また、自分で備える私的年金として個人型確定拠出年金(通称iDeCo)制度もあります。この制度は自分の資金を掛け金として拠出して、金融商品を積立て運用して60歳以降に受け取ることができます。
これらの制度をうまく利用して、今後退職金課税制度が変更になっても問題ないように備えられるといいですね。
また、制度変更に伴い結果的に自分にとっては増税になるかもしれないというデメリットだけに目を向けるのではなく、勤続20年未満で転職しても税制面であまり不利になることがないんだなと前向きに受け止めることで、勤続年数に捕らわれず新しい会社での活躍にチャレンジするキッカケになるかもしれません。
今から少しずつ、対策を考えて実行していけるといいですね。
【執筆者プロフィール】田端 沙織(たばた さおり)
キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー
証券・運用会社で10年以上の勤務経験を活かし、ファイナンシャルプランナー 兼 金融教育講師として「正しく・楽しく・分かりやすく」お金のことや資産運用について伝える講座や相談業務を関東圏中心に開催しています。得意分野は資産運用。小学生2人と保育園児1人の3児を絶賛子育て中。