小学校段階でのYICAの目的は、文法や単語の詰めこみでなく、「コミュニケーション能力の基礎づくり」。1・2年生は英語に「ふれる・知る」、3・4年生は「楽しむ・興味を持つ」、5・6年生は「楽しむ・理解する」ことが狙いという。
IUIは1人で複数の学校を受け持ち、英語と母国語で、それぞれの文化や伝統を対話やゲームなどを通じて伝える。担当する学校は毎年変わるため、児童は6年間で6つの国や地域の外国人講師と触れることができ、多くの異文化を直接体験することができる。
市の英語教育の概要がわかったところで、投稿にあった疑問を聞いてみる。
まず英語科の免許については、「理解教室」は正式な「教科」ではないため、IUIのような講師や免許をもっていなくても教えることに問題はないという。
「英語科の免許がない先生が教えている」という点だが、YICAにおいて、学級担任はあくまでサポート役。授業時間はIUIのほか、AET(Assistant English Teacher=英語指導助手)という外国人講師が行う。
授業時間については、YICAは2010(平成22)年度から、小学校での英語の授業を1~4年生は年間20単位時間、5・6年生は国と同じ同35単位時間と定めている。小学校は長期休暇などを除くと授業を行うのは35週間程度なので、1.5週間に1単位時間増える計算になる。1年生については6時間目の授業を実施しているところは「ほとんどないのでは」ということだ。
この点について、平担当課長は「私見だが」と前置きしたうえで「この程度であれば、子どもたちの負担になるとは思っていない。遊ぶことはもちろん重要だが、YICAによって得られることも大きいはず」と話す。
とはいうものの、実際にどのような授業が行われて、現場の教諭はどう感じているのかも確認しなければならない。「授業風景を見て、現場の声も聴きたい」とお願いしたところ、神奈川区の神奈川小学校で行われる授業に鈴木主任指導主事が同行していただけることに。
英語「に」親しむではなく、英語「で」親しむ
当日は来日11年目で、IUI歴5年という、ナシルさん(フィリピン)が3年生の授業を行うという。教室に入ってきたナシルさんは「Hello!How are you?(=こんにちは。元気ですか?)」と笑顔であいさつ。これに児童も「I’m fine.Thank you!(=元気です!)」と応じる。
授業中は学級担任がサポートに入っての2人体制で終始英語。ナシルさんはゆっくり、はっきりと大きな声で、時にはジェスチャーやイラストを交えながら進めていく。
この日はフィリピンの「Culture Festival(=お祭りや伝統行事)」で行われるという、「バンブーダンス」を紹介。3拍子のリズムで2本の長い竹の間をステップでかわすという踊りだが、ナシルさんは児童と一緒に体を動かしながら、棒を操作する側に「One,Two,Slide(=いち、にの、さんで棒を動かす)」、ステップする側には「One,Two,Step(=いち、にの、さんでステップする)」と教えていく。
児童らは初めての動きや竹の持ち方に最初は戸惑ったものの、ナシルさんがイラストを描くなど工夫して伝えると、熱心に聞き入りながら徐々に理解していった様子。
楽しんで身体を動かし、異文化に触れながらの45分はあっという間に過ぎ、最後は「Thank you」に加え、ナシルさんの母国フィリピンで使われるタガログ語で謝意を表す「salamat(=サラマートゥ)」と締めくくった。